東京木材問屋協同組合


文苑 随想


日本の文化 「日本刀」…Japanese Sword…

「♪一家に一本 日本刀 スカッーと爽やか日本刀♪」

其の64(現代刀)

愛三木材・名 倉 敬 世

源 義経流大鍬形付き、大鎧の兜(鉢) 阿部六陽 画
 
梨地葵紋蒔絵糸巻武家太刀拵。江戸時代(17世紀)(刀身・古備前(鎌倉)・吉包・重文

 今月は端午の節句でご猿。この日は我国では古から「武者人形」を飾るのが慣例でご猿。近頃は「武者人形」と言ってもピーンと来る人が少ないと思うが,昔は孫の初節句の時には母方の実家から贈るのが通例であった。男子の場合は女子の五段・七段の豪華な飾り付けの雛人形と違い普通は,「兜と太刀」のセット物が一般的で,それに「五月の鯉の滝登り」か「神武天皇」又は「坂田の金時vs熊」と髭だらけの「鍾馗」が飾られれば最高であった。勿論これらは当事者の武運長久を願い,鍾馗によって健康を祈願する事が目的であったが少しは親の見栄も何処彼処に見え隠れをしていたものであった。
 尚,「鍾馗」は厳つい貌をしておりますが,本来は疫病(流行病)を追払う神様でご猿ょ。

 所で現代刀の売れ筋の,ダントツ一位が近来アラウンド・ザ・ワールドになった居合刀で,意外に若者と外人〜どう云う訳だか判りませんが,USAよりヨーロッパ勢の方が多い〜。次が,男子誕生,家屋新築,端午節句,と続き,篤姫ブームのお陰で「嫁入り短刀」が微増,なれど「おくりびと」の棺上刀は微動だにせず。余談ですが,イザと言う時には葬儀屋のイミテーションの模造刀より,ご自分が選ばれた本物の方が西方浄土に行き易いでしょう。幸い?,百年に一度の不景気なので刀剣・刀装具類も未曾有の安さとなっておりますので,千載一遇のチャンスでやんす,思い切って之に乗りましょう。そして,之より記念日には家代々に亘って「日本刀」を床の間に飾り,世界に完たる日本文化の継承をして頂きたい。
 そこで,古刀,新刀,もよろしおますが,現代刀も中々の物ですので少々レクチャーを。現在,国指定の人間国宝(重要無形文化財)は,大隅俊平(山城伝)と天田昭次(相州伝)の二人が居られまして,その下に(財)日本美術刀剣保存協会の認定である。無鑑査という刀匠がかなり居り,その下に数多の弟子が居りまして,完全なピラミット形であります。そして,その各々が切磋琢磨をして日々に作刀に励んでいる訳でございます。

 それでは以下に現代刀の名品のエキスとしてのサンプルを2〜3,載せて置きましょう。

重要無形文化財保持者(人間国宝)
(3)刀銘 天田昭次作之 平成十九年丁亥吉日 長さ76cm(新潟県・天田誠一)。

重要無形文化財保持者(人間国宝)
(4)太刀銘 大隅俊平作 平成十八年八月吉日 長さ80cm(群馬県・大隅貞男)。

 次ぎの2振りは日本美術刀剣保存協会の無鑑査(国宝の次〜数人います)で優秀な刀工です。
(5)脇差銘 大野義光(山鳥毛・写し)昭和六拾壱利正月吉日 長さ55cm(葛飾・高砂)。
※山鳥毛とは上杉謙信の太刀の名で後世それを目指して多くの刀工が写しております

(6)脇差銘 高砂住義一作 平成二十年三月 長さ36.2cm(葛飾区・吉原義一)。


(7)太刀銘 松田次泰作 平成十九年春吉日 長さ81cm(二尺六寸七分)正恒・写し・千葉。


(8)刀銘 肥前八代住兼照鍛之 丙戌年一月吉日 長さ73cm 重さ750g 黒呂塗鞘拵付。

 ところで,現代刀の価格ですが,自分の好みで注文する場合〜この場合は多少の刀剣の知識が必要です〜。スタイルが一番,それより何より価格が一番,とか好みが有りますが,何かしらその人の琴線に触れる物が良いでしょう。初めの頃は誰も試行錯誤の連続です。
 因みに,人間国宝指定の,(3)天田師や(4)大隅師の作品ですと800万前後でしょうか?,尤も,現在800万なら古刀や新刀でも相当な名刀が買えます。因って人間国宝の大先生もツライところですが,トップが安くすると下の弟子がモォー大変です,メシが食えません。(5)の無鑑査の山鳥毛の義光師で二割,(6)の備前伝の義一師で三割位ダウンかと思います。尤も,義光師の脇差は20年前に165万で売れている物ですが,今も余り変わらないでしょう。(7)の次泰刀匠は2年前に協会の最高位であった,高松宮賞を取った今売り出し中の鍛冶。鎌倉期の備前伝や山城伝の長物を造らせたら若手ではピカ一でしょう。評価は300位?。(8)の肥前の兼照刀匠の刀は最近の刀屋のカタログに居合刀に最適と掲載された物です。「清麿」写しの豪壮なスタイルの拵付で銀無垢のハバキが付いて75万円は安いでしょう,彼は熊本の八代産で兄弟三人が鍛冶で普段は全員が「赤松太郎」との銘を入れております。

 尚,価格の高低は,先ずは出来,伝来,人気,折紙&鑑定,これ等が渾然一体となって醸しだされて定まる訳です。オークションは別として普通の数奇者・コレクターは長年に亘り追い続けていた物が目前に現れた時に買えれば安い,買えなければ高い,という事でその時にフトコロに運が有るか無いかが分かれ目でご猿。

 昔から太刀が一番で刀が二番,三番が短刀,四番が脇差,と言う順位で値段が付きます。例えば,太刀が100なら刀は90,短刀は刀の半分の45,脇差は3分の1の30位が
大体の基準です。長巻・薙刀・槍は別評価ですが,大体が鎌倉,南北朝は高くて室町期や江戸期の物は相当下ります。勿論,出来・不出来と伝来により大きく違っては来ますが…

(トピックス)
 近頃はゲェ〜人のコレクターや,バイヤー(商売人)の数が急激に増えて来ております。それが確り基礎を学んだ後に来日して来ますので,意外に知識が豊富で刀工でも金工でも,チョットした偽物なら即座に見破る碧眼紅毛人もタント居ります。又,物の良し悪し等は別としても,価格面はこれらの外人は世界中のオークション情報を網羅しておりますので,瞬時に的確な判断をして頑迷固陋な純国産の骨董屋を驚ろかしております。

 現在でも日本刀の愛好者は少々オーバーに申しますと,浜の真砂の数ほど居りますが,意外に若者の数が増えて来ています,これはNHKの「大河ドラマ」の影響かと思われます。「日本の文化」も今月の現代刀でひと区切り付きましたので,これからは「直江兼続」の関係を調べて見たいと思いますので資料等が御座居ましたらお知らせ頂ければ幸甚でご猿。


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