東京木材問屋協同組合


文苑 随想

見たり,聞いたり,探ったり No.124

長野県 宝積山「光前寺」と「駒ヶ岳ロープウェイ」
青木行雄
※本堂の正面は本尊不動明王及び、八大童子をまつる祈願霊場。
 大きな杉の木に囲まれた森は霊場にふさわしく思う。
 今からおよそ700年程前、長野県駒ヶ根市赤穂村の「光前寺」に「早太郎」と言う大変利口で強い山犬が飼われていた。その頃、遠州府中(静岡県磐田市)の見付天神社では、毎年祭りの夜に村の娘を神前に人身御供として供える悲しい習わしが続けられていた。これを救おうと社僧一実坊弁存は、神仏に祈願して祭りの様子を探り、娘をさらう怪物が、信州の早太郎を恐れていることを知った。弁存は信州に行き、光前寺に「早太郎」を探し当てると、早太郎を借りた。娘の身代わりとなった早太郎の力によって怪物(老ヒヒ)は退治され、村の災難は除かれた。
 この報恩のために、一実坊弁存は「大般若経」を書写し、天神社から光前寺に奉納されたというのである。
※本堂を近くから写す。素晴らしい彫刻に目を見張る。1851年に再建。約160年過ぎている。
 以来、「早太郎」こそ、まさに不動明王の化身であり、災難除け、厄除けの霊犬なりとして広く信仰を集め、今なお見付より報恩の参拝が続けられていると言う珍しい伝説を聞いた。早速、仲間と一緒に現地に出掛ける事になった。
 ここで、天台宗宝積山「光前寺」を紹介する。
 天台宗のこの寺は、別格本山となっており、信州駒ヶ根の麓にある。別名「光苔の寺」とも言われている。
 この寺は、不動明王を御本尊として貞観2年(860)に本聖上人により開基されたと言われている。以来1150年の長い歳月の間には幾多の火災等により古記録を焼失したようだ。古くは武田・羽柴家等の武将の保護を受け、特に徳川家からは地方寺院としては破格の60石の寺領と10万石の大名格を与えられる等、隆盛をきわめた。
※この三重塔は県宝で、南信州唯一の塔である。高さ約17メートルの均整のとれた美と、彫刻の美しさは素晴らしい。1808年の建立。約200年前の建物である。
※この道は表参道だが両側にある石垣の穴の中に光苔が見られる。5月頃から10月の初め頃、穴の奥から奇妙な光を放つ苔。
 明治以降は多くの末寺等も廃寺となったが、今なお樹齢800年とも言う杉の巨木に囲まれた境内には14〜15棟の堂塔を備え、長野県下屈指の大寺である。南信州随一の祈願霊場として広い信仰を集めている。
 本堂の前庭と本坊客殿奥の庭園、仁王門から参道を経て三門、本堂へと続く直線上の伽藍配置、及び、それをとりまく境内林など境内全域約6.7ヘクタールが、昭和42年5月10日付で光前寺庭園として文化財保護法による国の名勝に指定され、静寂な環境と風致は、長野県下随一と称せられている。
 春は庭内のしだれ桜は素晴らしく開花期間中は、ライトアップされ、秋には紅葉が見事である。
 表参道の両側の石垣の中に光苔が見られる事で有名となり、この苔を見る為に、遠方から観光客が訪れる。別名「光苔寺」の近くには観光地も多く、一度に何ヶ所も観光が出来る場所であった。
 「光前寺」は、平成22年「開創1150年祭・御開帳」を開催しています。



※境内全域6.7ヘクタールもあり、国の名勝に指定された庭園は春はしだれ桜、秋は紅葉、参道の両側に積まれた石垣の奥から光苔が見られる等、全国でも珍しい寺である。中央の上御にある「経蔵」には「早太郎」報恩のため、奉納された「大般若経」600巻も所蔵されていると言う。

 期間は春:平成22年4月3日(土)〜5月9日(日)
    秋:平成22年10月23日(土)〜11月14日(日)
 「光前寺」TEL. 0265-83-2736

※ロープウェイは7分30秒で1,662mから2,612mまで約1,000mの上昇する。水平全長2,127m。定員61人乗りである。

 興味のある方は直接電話をして聞いて下さい。
 なかなか見ごたえのある寺であった。

 この「光前寺」近くの「早太郎温泉」に宿泊し、翌日「駒ヶ根高原」に行ったので、その時の様子を記して見た。

 中央アルプス天空の大パノラマ

 標高650mぐらいから1時間以内に3つの季節を味わう事が出来るのが、この「駒ヶ根」である。
 10月前半、早太郎温泉附近は標高約650mぐらいで日中の温度は15度ぐらい、紅葉にはまだ少し早かった。「菅の台バスセンター」から地元のバスに乗りかえて約40分で「しらび平駅」に到着した。標高650mからバスで1,600mへ、そして、「しらび平駅」から「ロープウェイ」で高さ2,612mの「千畳敷駅」まで7分30秒で到着した。
 秋の紅葉前から真っ盛りの紅葉を見て、一気に真冬の光景になる。ホテルで揃いのジャンパーを着ての1ショット。なんと気分の良いことか。

 駒ヶ岳を中心に中央アルプス、御岳山、北アルプス、立山連峰、南アルプス、富士山等を一望でき、高山植物の宝庫としても有名である。山岳、渓谷、森林の自然美に気軽に触れることの出来る場所はあまりないと思う。とにかく素晴らしい所であった。

※千畳敷駅附近のカール(圏谷)にて。ホテルより借りた揃いのジャンパーを着ての1ショット。
 伊東秀晃氏撮影(気温-1度)
※中央アルプスから南アルプスを望む。中央の右側に小さく見えるのが3,776mの富士山である。初日の出は富士山の山頂から昇ると言われている。
※初雪か、残雪か、頂上近くに白い所が見える。もちろん地面は凍っていた。(気温-1度)
 ロープウェイの概要
 中央アルプス宝剣岳(標高2,931m)直下の通称「千畳敷カール」まで架けられた、我が国最初の山岳ロープウェイ。昭和42年完成、平成10年リニューアル。
 中央アルプスの主峰駒ヶ岳は標高2,956m、眺望絶佳、真夏の別天地、富士山をはじめ南アルプス連峰、御岳山、乗鞍岳、北アルプスを一望でき、また、高山植物の宝庫として有名である。
 水平全長 2,127.5m、斜長 2,333.5m
 高低差 約1,000m(日本最高である)
 中央アルプスの千畳敷カールは四季を通して楽しめる。
 この醍醐味は東洋随一を誇るロープウェイならではの大感動であり、桁外れにスケールの大きい自然の中で中央アルプス「駒ヶ岳ロープウェイ」を楽しんだ。

平成22年5月30日 記

 資料
中央アルプス観光(株)資料
光前寺寺史より
写真、伊東秀晃氏協力

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