東京木材問屋協同組合


文苑 随想

日本人 教養 講座 「日本刀」…Japanese Sword…

「♪一家に一本 日本刀♪」
其の6(基礎知識)

愛三・名 倉 敬 世

 刀剣の種類,呼称は地域により多少の違いはありますが大体以下の如しでありんす。
(1)種類はスタイルにより,剣,太刀,刀,脇差,短刀,槍,薙刀,長巻,等に分れます。

イ。剣(けん,つるぎ)
 二口の短刀の棟を合わせた如く左右が同形です。信仰とリンクしての使用形態が多い。お不動様(不動明王→阿遮羅嚢他アシヤラナータ,ヒンズー教のシバ神の異名)の右手に持つ剣の正式名称は三鈷剣さんこけんという,剣それ自体の実戦での使用はあまり例が無い。
 ケンもホロロとは,剣では無く,キジの鳴き声のケン,ケン,ケン〜が語源でやんす。

ロ。太刀(たち)。
 大鎧(おおよろい)と共に華やかなりし騎馬戦の時代の主要な武器,身に付ける場合は刃を下にして佩く,…ぶらさげる。平安末期(1150〜)より室町前期(応永…1430〜)頃迄。
刃長は2尺五,六寸が多く,三尺以上が大太刀,二尺未満が小太刀,この長さは後の刀と同じなので混同しやすいが,地鉄の鍛肌や造り込み,刀工名や銘の位置で判ります。
 古代の直刀は大刀たちや横刀たちと書いて上古刀という分野を設けて区別をしております。

ハ。刀(かたな)。
 戦国末期の集団戦では一番ポピラーな武器,身に付ける場合は刃を上にして腰に差す。室町以降は全て打刀。二尺三寸が定寸。太刀より反りが少なく馬上戦より徒歩戦に最適。尤も,使用目的によって異なり,南北朝期には今の刀は脇差と呼ばれて添え差しでした。
 太刀は抜刀してから頭上に振り上げて切り下す,即ち動作が二段モーションなのだが,打刀は一度の動作…抜き打ち,で相手を倒せる,これは実戦では最大のポイントである,いつの世もスピードが最優先という訳で,室町期の後半からは太刀より刀が主流となる。又,何よりも,軽くて,安くて,良く切れる,これが関(美濃)や備前,等の末古刀の最大のウリである,実際,室町末期は戦闘方式が集団戦になった為,ワァーと押込んで,ワァーと逃げて来る,大体がこの繰返しのため,戦場では走れ無くなった者は死んだも同然と云われていた,因って武器は片手で扱える程の軽さ,惜し気も無く消耗品として捨てられる安さ,そして,切れ味が抜群,これが一番という訳である。こんな虫の良い条件は無理だと思えるが,日本人は器用なのですな,驚く事にこれが出来るんです。
 江戸期になると武士は刀と脇差しの着用が正式に定められ,千代田城に登城の際には刀拵えは黒塗で鐺こじりが丸,脇差は切,と決められ300諸公は全てこれに従っていた。

二。脇差(わきざし)。
 刀の添え差し,長さ一尺(30cm)より二尺(60cm)の間で刀を縮小したスタイル。一尺三寸位を小脇差,一尺五寸前後を脇差,一尺八寸以上を長脇差(長ドス)と云う。
 当時は武家や公家以外での名字,帯刀は少なく,特別に許されても庶民は脇差し迄で,浪人(武士扱い)が二尺以上の長いのが1本,アウトローのヤクザが町人扱いで脇差迄,これが二尺を越えると武家の領域となり打首,よってギリ〃〃の一尺九寸前後が多い,これを長ドスと云うが,本来ドスとは短刀の事で,語源は脅おどス,の略。

ホ。短刀(たんとう)。懐刀(ふところかたな)。
 腰に差すものは腰刀こしがた,衣服の内側に入れるものは懐刀ふところがたな,懐剣かいけんという。長さは五寸(15cm)から尺(30cm)未満。短刀はその形状が幸いし焼失,消耗が少く,残っている古来の名物は刀や脇差より多いかも知れません。又,「嫁入り短刀」の売れ行きが最近かなり好調の様でござんす。
 法的には15cm以下の刃物は目釘穴が開いていなければ,銃刀法の適用除外ですので,登録書も所持許可書も必要ありません,包丁やナイフ,小刀はこの範疇ということです。尚,往古は使用目的が同一の場合が多いので短刀と脇差の区別は致しておりません。

ヘ。槍(やり)。鑓(やり)…これが本字で古い。
 鉾ほこ,袋槍,…正倉院宝物,これらも同形体。直槍=大身,笹穂,柳葉,銀杏,菊池。
有技槍=鍵,片鎌,十文字(千鳥・毘沙門・手違)。使用形態は,短槍,長柄,篭槍。
 日本の合戦史上,槍がメインとなるのは主に戦国末期の集団戦となる室町以降であり,以来「一番槍の巧名」「槍一筋の家柄」という言葉が生れた。以前は弓箭(ゆみや)の戦い。
 槍は刀剣と鍛法が異なるため,専門の槍鍛冶が刀鍛冶とは別に居たと言われているが,確かに名工の有銘な作は少なく,南北朝期の山城の「来国次」が一番古いところである。室町後期(1510以降)には備前や関の刀工が作り始め名槍が多く作られる様になる。
 槍の拵(柄)は白木の樫が一般的であるが,朱柄槍,青貝槍,玳瑁たいまい槍,等も有る。
鞘は,熊毛,鳥毛,他に異形な鞘も有るが,多くは家名と威勢を知らしめるものである。

ト。薙刀(なぎなた)長刀(ながかたな)長巻(ながまき)。
 以上は同意語とみて差し支えない。ナギナタは薙ぐ刀から転じた様であるが,古くは長刀と書かれている。発祥も古く「後三年絵巻」「平家物語絵巻」にも描かれており,南北朝期に最盛期となり白頭巾に朴歯の下駄の僧兵の主要な武器として知られている。これらは多くが後に刀や脇差しに直されている。戦国期以後は女子の専用道具となる。
 鎌倉は頭かしらがスマート,南北朝は刀と同じでバカデカ,室町は頭が張り過ぎ不格好で,江戸は小作りとなり其の縮小版,通称は「女め薙刀」。

 ※次回は,刀剣協会,同好会,刀屋,等の話や「何でも鑑定団」の刀バージョン,又,今話題の「刀剣,友の会」のご報告を申し上げるつもりで御座候。




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