東京木材問屋協同組合


文苑 随想

時代を見つめて No.43


「16年度路線価」を考えて見た

時見 青風



 国税庁は16年8月2日,相続税や贈与税の土地評価の算出基準となる平成16年分の路線価(1月1日時点)を公表したと各紙に記載された。
 標準宅地(住宅地,商業地,工業地)の路線価の全国平均は1m2当たり11万5千円と言う。山林も含んだ全国の土地の単価は分からないが,坪375千円となるから,かなり高い平均単価と思うが,よく理解出来ない。
 そして,国税庁,東京国税局,関東信越国税局の首都圏1都3県(東京,神奈川,千葉,埼玉)の16年の路線価は平均1m2当り25万7千円と言う。坪当りに換算すると848千円となる。そして,東京都の平均路線価は1m245万4千円で坪149万8千円となる。どうも東京の路線価は高すぎるのではとも思われるが,銀座の1等地も含まれるのでこの平均単価になるのだろうが,他とは格差も大きい。
 神奈川県は1m217万円,坪56万1千円であり,埼玉県は1m211万円,坪36万3千円である。
 そして,千葉県の平均価はm2当り8万3千円と他県よりかなり下まわり,坪に換算すると273千円となった。

 平成2年バブル期の頂点を界に下げ始めた路線価は,全国的には今年で12年連続マイナスであると言うが,マンション建設ラッシュなど住宅需要の都心回帰や再開発の影響で東京や大阪,名古屋各都市圏で上昇や横ばいが見られ,昨年に比較すると今年の下落率は東京圏は2.7%(前年4.0%),大阪圏は7.7%(同8.7%),名古屋圏は6.0%(同6.5%)とそれぞれ縮小。3大都市圏を除いた地方圏は8.2%(同7.7%)と下落率が今も拡大し,都市圏と田舎の2極化が顕著になったことが数字でも分かる。
 都道府県庁所在地の最高路線価は,銀座四丁目の交差点三愛と思っていたが,銀座五丁目の文具店「鳩居堂」前が最高で1m2当り平成15年分はm21,272万円で坪単価4,197万6千円であったのが,16年は1m21,376万になり坪単価,45,408千円で8.2%高くなった事になった。
 バブル崩壊後,“地盤沈下”が叫ばれた銀座も,高級ブランド店が続々進出「シャネル」は銀座3丁目に十階建ての自社ビルを建設中で12月にオープン予定であり(大成建設が建設中),道路挟んだ隣には15年7月宝飾品ブランドの「カルティエ」が,銀座で2店舗目の営業を開始した。「クリスチャン・ディオール」は10月銀座内の別の場所に移転し,世界最大規模になる予定と言う。世界の一流ブランドが競って銀座の土地を押し上げている。
 又六本木ヒルズ,品川駅や汐留のビル郡も路線価を押し上げる原因になっていると言う。実際昨年より高くなっている。

標準宅地の都道府県別平均路線価(単位千円)

  平成15年分 平成16年分 坪単価
  m2 m2 (16年)
1 北海道 46 43 141.9
2 青 森 41 39 128.7
3 岩 手 53 50 165
4 宮 城 68 62 204.6
5 秋 田 51 47 155.1
6 山 形 40 38 125.4
7 福 島 43 39 128.7
8 茨 城 44 40 132
9 栃 木 52 48 158.4
10 群 馬 51 47 155.1
11 埼 玉 116 110 363
12 千 葉 89 83 273.9
13 東 京 461 454 1,498.20
14 神奈川 180 170 561
15 新 潟 47 43 141.9
16 富 山 46 42 138.6
17 石 川 73 65 214.5
18 福 井 54 50 165
19 山 梨 54 48 158.4
20 長 野 51 47 155.1
21 岐 阜 58 53 174.9
22 静 岡 81 75 247.5
23 愛 知 102 96 316.8
24 三 重 49 45 148.5
25 滋 賀 51 47 155.1
26 京 都 143 132 435.6
27 大 阪 187 172 567.6
28 兵 庫 116 106 349.8
29 奈 良 68 62 204.6
30 和歌山 64 60 198
31 鳥 取 63 57 188.1
32 島 根 57 54 178.2
33 岡 山 62 57 188.1
34 広 島 116 106 349.8
35 山 口 56 51 168.3
36 徳 島 86 78 257.4
37 香 川 68 63 207.9
38 愛 媛 68 64 211.2
39 高 知 87 84 277.2
40 福 岡 109 102 336.6
41 佐 賀 47 44 145.2
42 長 崎 83 75 247.5
43 熊 本 57 54 178.2
44 大 分 49 47 155.1
45 宮 崎 42 40 132
46 鹿児島 53 51 168.3
47 沖 縄 75 70 231
全国(平均) 121 115 379.5

 1都1道2府43県計47の全国平均15年度が121千円で16年度5%下落の115千円となった,数字を見ても分かるように1番下落率の大きい県は11.1%下落の山梨,2番目が石川県である。そして,前にも記したが下落率の一番低いのは東京で1.5%,そして,理由は分からないが2番目に低い所が3.4%の高知県であった。
 次に都道府県庁所在地の最高路線価を順位別に記して見た。

平成16年分のm2単価と坪単価(単位千円) 

      m2単価 坪単価
1位 東 京 中央区銀座5丁目 13,760 45,408
2位 大 阪 北区角田町御堂筋 4,080 13,464
3位 名古屋 中区栄3丁目 大津通り 3,400 11,220
4位 横 浜 西区南幸1丁目 横浜駅前 3,310 10,923
5位 福 岡 中央区天神2丁目 3,240 10,692
6位 さいたま 大宮区桜木町2丁目大宮駅西口 1,900 6,270
7位 神 戸 中央区三宮町1丁目 三宮センター 1,860 6,138
8位 札 幌 中央区南1条西3丁目 1,790 5,907
9位 広 島 中区基町 相生通り 1,680 5,544
10位 京 都 下京区四条通寺町 1,670 5,511
11位 熊 本 手取本町 1,570 5,181
12位 仙 台 青葉区中央1丁目 1,460 4,818
13位 千 葉 中央区富士見2丁目 1,360 4,488
14位 長 崎 浜町 浜の町アーケード 1,030 3,399
15位 岡 山 本町市役所筋 1,000 3,300
16位 鹿児島 東千石町 天文館通り 970 3,201
17位 静 岡 紺屋町 紺屋町呉服町通り 940 3,201
18位 松 山 湊町5丁目 松山市駅前通り 760 2,508
19位 徳 島 元町1丁目 元町通り 640 2,112
20位 新 潟 東大通1丁目 新潟駅通り 630 2,079
21位 金 沢 香林坊1丁目 百万石通り 620 2,046
22位 大 分 府内町1丁目 中央通り 620 2,046
23位 奈 良 東向中町 大宮通 570 1,881
24位 高 松 兵庫町 中央通り 560 1,848
25位 那 覇 久茂地3丁目 国際通り 560 1,848
26位 宇都宮 馬場通り2丁目 大通り 530 1,749
27位 甲 府 丸の内1丁目 甲府駅前 520 1,716
28位 富 山 桜町1丁目 駅前通り 500 1,650
29位 長 野 大字南長野 長野駅前通り 490 1,617
30位 高 知 帯屋町1丁目 帯屋町筋 490 1,617
31位 盛 岡 大通2丁目 大通り 480 1,584
31位 水 戸 宮町1丁目 水戸駅北口 480 1,584
31位 宮 崎 橘通西3丁目 橘通り 480 1,584
34位 岐 阜 神田町9丁目 長良橋通り 460 1,518
34位 和歌山 友田町5丁目 JR和歌山駅 460 1,518
36位 福 井 中央1丁目 駅前通り 430 1,419
37位 秋 田 中通2丁目 秋田駅前通り 370 1,221
38位 青 森 新町1丁目 新町通り 350 1,749
39位 松 江 朝日町 松江駅前通り 350 1,749
40位 鳥 取 栄町 若桜街道通り 320 1,056
41位 山 形 香澄町1丁目 山形駅前大通り 290 957
41位 前 橋 本町2丁目 本町通り 290 957
43位 佐 賀 中央本町 中央大通り 275 907.5
44位 福 島 栄町 福島駅前通り 265 874.5
45位  津 羽所町 津停車場線通り 230 759
46位 大 津 春日町 JR大津駅前通り 210 693
47位 山 口 米屋町 米屋町商店街通り 160 528

 上記の数字を比較すると47位と1位とでは86倍の差がでた。勿論,山口県も1等地で中心街のこの差である。
新木場の路線価
 バブル期には駅前で坪2,000万円とも言われ,又3丁目の海側でも坪800万円の話もあって,何年か忘れたが500万円ぐらいで買った人の話も聞かれた。バブル最高時が平成2年であったから,今年で14年も経ったことになる。
 今年の新木場の路線価はほぼ横ばいと言う,駅前は大きなビルが3本目の建設で町らしくなって来たが,なぜか駅前だけが若干下落したようである。
 全国で下落を続ける中,東京でも再開発が進んでいる所だけは,2〜3年前から上昇を始めている。特に目立つのは,表参道が9.8%,丸の内が18%も上昇,品川駅東口は東海道新幹線新駅開業もあり7.1%,又前にも記したが,六本木や汐留等も上昇中である。
 新木場もその内開発が進めば,目玉の場所かも知れない。
 では,平成16年度の新木場の路線価を記して見ると。

   新木場駅前 940千円(坪)
    〃 2丁目東木通り 780千円(坪)
    〃 ニューキバの前通り 730千円(坪)
    〃 2丁目DHCあたり 790千円(坪)
    〃 3丁目製材所通り 730千円(坪)
    〃 3丁目海岸通り 730千円(坪)
    〃 3丁目ヘリ通り 760千円(坪)
    〃 2丁目仲通り 710千円(坪)
    〃 辰巳地区内 660千円(坪)

 新木場内の取引の話を聞くと,この路線価より若干安く売買されているのではないかと思う。昨年の年末までは,随分売物件が多くあったと聞いていたが,今年に入って2〜4月頃から急に売買が決まり,売物件はなくなった。買いたという話はよく聞くが,ない。時代の変化が顕著に見える。

平成16年9月12日記




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