東京木材問屋協同組合


文苑 随想

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荒れ狂った自然界「2004」年の回顧

青木行雄

 集中豪雨に台風,猛暑に大地震,津波・インフルエンザ,とにかく平成16年は異常な一年であった。この例年にない一年をどうしても記録に残しておきたいと記事にすることにした。主に自然界の災害を主体に記して見る。

 2004年(平成16年)1月12日山口県の養鶏場で鳥インフルエンザが国内で79年ぶりに発生した。アジアの国々でも猛威を振っていた。この山口県を皮切りに大分県でも発生し,続いて京都府でも発生した。
 1月の後半の新聞にはこの鳥インフルエンザの問題を大きくとり上げ紙面を独占した。
 山口県の山口農場では感染したニワトリを約3万5千羽も廃棄処分したのである。
 大分県では早期発見で問題は少なかったが,京都府で発生したインフルエンザは届出が遅かった為に大問題となり,感染も広がり,とうとう経営者の自殺問題までに発展した。
 天災が人災に変わっていった例でもある。又海外から輸入されていた鶏肉は輸入国で鳥インフルエンザが発生し禁止となった。ヤキトリ屋は,カンコトリが鳴き,倒産や廃業が相次いだのも,つい1年前のことである。

 前線や台風の影響で,1日あたりの降水量が400ミリを超えた観測数が,2004年はアメダスの統計開始以来,過去最多を記録したと言う。
 6月21日台風6号が高知県に上陸,九州から東海地方にかけての太平洋側で300ミリを超える総雨量を観測したのを始め,7月12・13日新潟県中越地方から福島県会津地方にかけて集中豪雨が発生し,栃尾市(新潟県)で427ミリの総雨量を観測した。そして8月30日,台風16号が鹿児島に上陸,西日本の太平洋側で驚異の500ミリ,総雨量を観測したのである。
 このように6月から10月にかけて日本に上陸した台風の数は,今まで最多記録は6個だったものが,今年は10個となり被害も多大であった。特に10月20日に西日本に上陸した台風23号は九州地方から関東地方の広範囲で,これまでの1日あたりの降水量の記録を上回る大雨を観測し,死者・行方不明者も平成に入り過去最悪の92人を出した。いかにも天災の恐ろしさを見せつけられたのである。
 前線や台風に“異常”をもたらした要因は,夏の猛暑の要因である「太平洋高気圧」と言う。7月の新潟・福島での集中豪雨では勢力の強い太平洋高気圧が日本列島を覆い,高気圧の縁を沿うように暖気が流入したため前線が活発化したと言う。気象については,分からない事ばかりだが,梅雨の6月に東京で「真夏日」が9回もある記録的な暑さなど考えられないが,8月には東京で「真夏日」が連続40日を記録し,6月・7月・8月・9月で気温30度以上が70日もあった。そして,東京の最高気温39.5℃までのぼり,日本で最高は甲府の40.4℃まであったとの記事も新聞で見た。いかに猛暑だったかが分かる。
 記事が前後するが,梅雨の6月に強力で大型の台風が2回も上陸したのも気象観測史上珍しいそうだが,九州の佐賀市で発生した竜巻らしい突風もすごい。被害は幅300メートル長さ8キロメートルにわたる家々の屋根を吹き飛ばした。「ゴウー」という音がして,車まで舞い上げたと言うから,アメリカのニュース等で良く見る光景と同じだったのだろうか。又12月5日,東京では発達した低気圧の影響で観測史上最大の最大瞬間風速40.2メートルを記録,関東地方は軒並12月の最高気温を更新した。
 気象が異変して,動物や植物まで変化が大ありである,台風の影響で木々の実が落ち,クマが里におりて来たのは100頭にものぼり人害が重なった事は多くの人の知る所だが,東京・奥多摩の森林が,シカの食害に遭って“砂漠化”の危機に陥っていると言う。天変地異のせいかは分からないが,シカが増殖し,スギの幼木の新芽や皮を食い荒らしているらしい。
 16年の6月に,盛夏の花のはずのノウゼンカズラやキョウチクトウが真っ盛り,6月の気温がいかに高かったかを示した。
 季節はずれの12月上旬,台風27号が列島に接近,いかに「台風の年」であったかを物語った。

 9月1日に21年ぶりに中規模噴火が発生した長野・群馬県境の浅間山(2,568メートル),9月中に中規模噴火が3回発生した,そして,11月14日にも再び中規模噴火が発生している。地元にはかなりの火山灰が降り,野菜に影響した。台風・豪雨等で野菜の高騰も記憶に新らしい。スーパーでレタスが1ケ1000円をつけた事もあったようである。
 日本は世界でも有数の「火山大国」,17年2月に本格帰島が決定している三宅島でも11月,2年ぶりに小規模な噴火が観測された。
 そして,平成7年の阪神大震災から平成17年1月で10年目を迎えるが「震度7」の強い揺れが16年の10月23日夕方5時過ぎに新潟県中越地方を襲った。そして本震発生から約2時間の間に震度5弱以上の強い余震が10回も発生している。この地震で尊い命が40人も奪われた。そして未だに元の村に帰れない人々が多くいる。あのレスキュー隊に救われた幼ない命や脱線はしたが人命には影響がなかった新幹線等は記憶に残る出来事であった。
 そして,世界中に大激震が走ったのが,12月26日朝に起きたスマトラ島沖大地震によるインド洋に巨大津波が発生した事である。津波発生以来,毎日新聞紙上に詳細が報告されているが,予想をはるかに超えて17年1月7日現在,死者17万人とも言われている。死んだ人,生き残られた人の人間の運命と言うものに深く学ばされる気がする。
 これから,この地震・津波が世界にどのように影響して来るか,予断が出来ない。
 自然災害による事について2004年を降り返って記して来たが,16年最後の31日東京に午後2時頃から降り出した雪はたちまち積雪となり,首都高速を通行止めにしてしまった。2004年,自然界が最後の最後まで私達へきつい怒りと憎しみに見えて来る。だが,この雪は我々にうるおいと安らぎをもたらしてくれた有り難い雪花と解釈して,17年は災害のない良い年であって欲しいと思いながら筆をおく。

 災害も含めて16年中に記憶に残しておきたい出来事を1月から順に記して見た。

2004年出来事(平成16年)              ※(記)は文中にあり
1月12日(記) 山口県の養鶏場で鳥インフルエンザウイルスを79年ぶりに国内で確認
2月9日 陸上自衛隊がイラク南部サマワに到着,活動を開始
3月26日 六本木ヒルズで6歳男児が自動回転ドアに頭を挟まれ死亡(自動回転ドア事件)
5月27日 イラクで日本人フリージャーナリスト,橋田信介さんと小川功太郎さん銃撃され死亡
7月1日 「熊野古道」世界遺産登録が決定
7月12日 長野県の白骨温泉で入浴剤使用が発覚。各地で温泉偽装が問題になった
8月13日 アテネ五輪が開幕
日本勢は1964年の東京五輪と並ぶ16個の金メダルを獲得した
8月14日(記) 気温30度以上の「真夏日」が東京・大手町で連続40日を記録
(真夏日は合計70日の記録となる)
8月27日 プロ野球の近鉄とオリックスの球団合併契約が締結
9月1日(記) 群馬・長野県にまたがる浅間山が噴火
9月18日 プロ野球の選手会が史上初のストを実施
9月27日 第2次小泉改造内閣が発足
9月28日 ニューヨークの原油先物相場で史上初めての1バレル50ドルの大台突破
10月1日 米大リーグ・マリナーズのイチロー選手がシーズン最多安打記録を84年ぶりに更新
10月20日(記) 16年上陸10個目となる台風23号が高知県土佐清水市付近に上陸した
10月23日(記) 最大震度7を観測した新潟中越地震が発生
11月1日 新1万円札,5000円札,1000円札発行
11月2日 米国大統領選でブッシュ氏がケリー氏を破り再選した
11月2日 パ・リーグの新球団「東北楽天ゴールデンイーグルス」誕生
新規加盟球団としては50年ぶりとなる。本拠地は仙台で,楽天がライブドアとの激しい参入争いを制した。ダイエーはソフトバンクに買収されるなど,情報通信大手の参入によって,球界は新時代に突入。オリックスと近鉄は合併し「オリックス・バッファローズ」として今季を戦う。
11月? 番外 韓流ブーム過熱
韓国ドラマ「冬のソナタ」の主人公を演じたペ・ヨンジュン,が「ほほ笑みの貴公子」として大ブレーク。韓流ブームが始まった。4月と11月の来日時には「ヨン様」をひと目見ようと中高年女性らを中心に計8500人が空港に大集合,その効果はCMやロケ地訪問の「冬ソナツアー」,韓国語学習にまで及び,経済効果は日韓両国で2297億円に達するとも言われる。
11月14日 紀宮さまと黒田慶樹さんご婚約が内定
11月15日 政府調査団が横田めぐみさんのものとされた「遺骨」などを北朝鮮から持ち帰る。その後,それは別人のものと判明
12月9日 政府,自衛隊のイラク派遣の1年延長を決定
12月18日 故高松宮妃の喜久子さま,ご逝去。92歳
12月26日(記) スマトラ島沖大地震でインド洋に巨大津波が発生,タイ,インド,スリランカなどインド洋沿岸国を襲い,大被害をもたらした。リゾート地として有名なプーケット島(タイ)などには日本人観光客も多数訪れており,日本人を含む犠牲者は1月7日マデに17万人。地震の規模はマグニチュード(M)9.0とある。
12月30日 紀宮さま。黒田慶樹さん正式婚約,宮内庁より発表,両人の記者会見,結婚式の日取りは17年9月以降の予定
12月30日 2004年(平成16年)東証大納会
1万1488円,日経平均株価2年連続上昇した。
12月31日(記) 発達した低気圧が本州の南の海上を北上して,甲信越など大雪となった。都心で大みそかに雪が積ったのは21年ぶりと言う。飛行機や鉄道のダイヤが大きく乱れたほか各地の高速道路も通行止となり,帰省客に大きな影響が出た。
追記  
12月31日 年越しのお札78兆円
家庭や企業・金融機関の金庫などで年を越すお札(日銀札)の合計が78兆円と言う。
お札の枚数135億5千万枚
1枚ずつ積み重ねると,富士山の高さの約359倍あると言う。横に並べると地球約52周分。
種類別では
1万円札=70.2億枚
5千円札=5.5億枚
1千円札=38.1億枚
2千円札=5億枚
平成17年1月9日 記
 

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