日本人 教養 講座 「日本刀」…Japanese
Sword…
「♪一家に一本 日本刀♪」
其の14 「刀剣・ア・ラ・カルト II」。
愛三木材・名 倉 敬 世
今月は一息抜いて,刀剣より派生を致しました「日本語」と,どなたでもご存じの「武将」と「名士」の佩刀を紹介致して見ましょう。
始めに我々が日常何げ無く使っている言葉の内にどれくらい有るのか,著名なものを拾って見てみましょう。
「伝家の宝刀を抜く」 オールマイティで問題を解決出来るハズと思って,抜くのだが。
「抜いたら最後」 重大な覚悟で戦いに臨む時に使われる,もう後には引けぬ状態なり。
「切羽,詰まる」 切羽は鍔の前に付く薄い金属片。刀と刀がギリ〃〃と揉み合う有様。「鍔ぜり合い」 戦が一進一退となり形勢が接近していて,勝敗が不明の時の表現方法。
「鎬しのぎを削る」 鎬は刀の真中の高くなった線,白兵戦の時の表現方法で上記と同じ。
「反りが合わぬ」 気が合わない。刀の鞘は一本づつ反りが違うので入らないと云う事。
「元の鞘に納まる」 一度は離れ離れになったが,又,元の状態に戻った,と云う事。
「付つけ焼やき刃」 粗悪な刀身に刃だけ鋼を付けた刀。一時しのぎで誤魔化そうとする事。
「地鉄じがねが出る」 持って生まれたマイナーな本来の性質が隠しきれずに出てしまう事。
「目貫めぬき通り」 刀身が柄より抜けぬ様に真中に穴を開ける,その穴を塞ぐ飾り金具。
一番目立つ場所,と云う意味から,町のメイン・ストリートや中心部,繁華街を指す。
「鈍」←これ一字で「なまくら」と読む。刃物の切れ味が悪い事,またその刀や刃物。
「懐ふところ刀かたな」 本来は懐に入れる守り刀を云うが,重要な計画に加わる腹心の部下。
「抜き差しならぬ」 進退極まり身動きならず。孝ならんと欲すれば忠ならず,との事。
「身から出た錆び」 手入れ不足,自業自得とも云う,凡人は全身サビだらけが一般的。
「鞘さや当て」 すれ違いに鞘が当たると決闘。その予防の為に侍は全て右利きとなれり。
「折紙つき」 保証付き。刀剣目利きの本阿弥家の鑑定書が二段に折られていたので…。
「最後の土壇場」 絶体絶命。首と胴が離れた後に試し切りをする為に土で作られた壇。
「抜き打ち」 不意に切る。刀は刃を上にして差す為ワンアクションで可,太刀は2回。
「焼きが戻る」 完成品の刃物に再び加熱をすると鈍になる。「焼きが入る」とも云う。
「焼き直す」 切れ味が鈍くなってきた刀に,もう一度ヤキ(焼)を入れて鍛え直す事。
「なまっている」 方言の事では無く,切れ味が低下して来ている事。
「切味が良い」 刃物が良く切れる事から転じて,才能や技などの冴え具合を表現する。
「真剣に取り組む」 命がけで物事を行う事。
「単刀直入」 一人で刀を取り敵陣に切り込む事。前置き無しでズバッと本題に入る事。
「乱麻を絶つ」 麻の如く縺もつれていた世の中をスッキリとさせる事。頭に快刀と付く。
「ドスをきかす」 ドスは(脅す)から来ていて,本来は短刀の事を云うが今は脇差迄,
刀は二尺以上で侍のみ所持可,町人他は一尺九寸九分迄,ヤクザの長ドスとは此れ也。
「槍っ放し」 投げ遣り,と同義語。本来ヤリ(槍)には手持ち,投槍との二種類ある。
「大上段に振りかぶる」 剣道で相手を威圧する目的で真上に振りかぶる事。居丈高。
ザァーと考えても以上の如くです,如何に日本刀が日本人の心の中に存在していたか,良く判ります,この他にも未だ有ると思いますので気が付かれたらご一報下さい。
歴史上の著名な方の愛刀はどの時代の何処の産地の何と云う刀匠の刀を持っていたか,ポピュラーなところをご紹介して見ましょう。
平 貞盛 大和(奈良)天国 大宝(701) 平将門の乱の平定の恩賞として下賜。
源 頼光 伯 (鳥取)安綱 大同(806) 大江山の鬼退治に使用。童子切。
坂上田村麿 〃〃 〃〃 〃〃 〃〃 〃〃 蝦夷征伐の佩刀の中にこの名もある。
頼三位頼政 豊後(大分)定秀 文治(1185) 獅子王丸,鳥羽天皇より鵺退治の恩賞。
権五郎景政 山城(京都)宗近 永延(987) 京都三条派の祖,小狐丸は稲荷と共作。
源 頼朝 備前(岡山)包平 〃〃 〃〃 宝剣の「篭手丸」を佩刀としている。
源 義経 〃〃(〃〃)友成 〃〃 〃〃 壇ノ浦に用いる,薄緑は築前の長円作。
平 敦経 〃〃(〃〃)〃〃 〃〃 〃〃 〃〃 〃〃 が討死を遂げる。
和田義盛 〃〃(〃〃)正恒 〃〃 〃〃 正恒は備前・備中・筑紫に居り七種有り。
日蓮上人 備中(岡山)恒次 承元(1207) 一時期行方不明,現在・身延山久遠寺。
楠 正成 備前(〃〃)景光 文永(1264) 小竜景光・首切り浅右衛門家・明治天皇。
今川義元 筑前(福岡)左 建長(1249) 田楽狭間で戦死の時の佩刀。
織田信長 備前(岡山)光忠 暦仁(1238) 「光忠,これえ…」で28振を所持。
豊臣秀吉 名刀を恩賞用に数限り無く摺り上げたが,自分の佩刀には頓着していない。
徳川家康 筑後(福岡)光世 承保(1074) 三池典太,久能山のソハヤの剣の作者。
上杉謙信 備前(岡山)長光 正応(1288) 上杉謙信と景勝は身長あり長刀を好む。
直江兼継 〃〃 〃〃 兼光 延文(1356) 兼継は景勝の名参謀,知将。
福島正則 〃〃 〃〃 〃〃 〃〃 〃〃 この大兼光はもの凄い刀。東博。国宝。
池田輝政 〃〃 〃〃 包平 永延(987) 大包平として日本の三大名刀のNo.1。
北条氏直 〃〃 〃〃一文字 承元(1207) 一文字は福岡・吉岡・片山・正中・等有り。
滝川一益 〃〃 〃〃 高綱 〃〃 〃〃 古備前鍛冶。一益は本能寺の変で終了。
山中鹿之助 〃〃 〃〃 祐定 永正(1503) 尼子の臣「我に七難八苦を与え賜え」。
石田三成 相州(鎌倉)正宗 正和(1312) 切込正宗,は三成以前の刀キズが有名。
加藤清正 肥後(熊本)同田貫 文明(1480) 熊本の郷土刀,上野介,等数名有り。
本多平八郎 備前(岡山)守利 〃〃 〃〃 忠勝,個人は生涯で一度の負けも無し。
向井将監 備中 〃〃 〃〃 文治(1185) 備前と同名だが青江鍛冶。お船手奉行。
柳沢吉保 備前 〃〃 守家 正応(1288) 畠田鍛冶の祖。ランクはトップクラス。
徳川忠長 山城(京都)了戒 永仁(1293) 忠長は家光の弟,家督争いに負け切腹。
前田利常 築前(福岡)安吉 延元(1340) 前田家二代,知恵者,取潰しを免れる。
斎藤利宗 阿波(徳島)泰吉 永禄(1560) 海部刀,美濃の斎藤家伝来。道三の前。
山内容堂 土佐(高知)行秀 嘉永(1850) 当時の新作刀,幕末の土佐藩主の佩刀。
坂本竜馬 〃〃 〃〃 吉行 延宝(1673) 暗殺された時より185年前の郷土刀。
佐久間象山 相州(鎌倉)国光 弘安(1280) 新藤五国光,相州伝の祖,名刀である。
井伊直弼 摂津(大阪)助広 寛文(1661) 井上真改と並び,大阪新刀の代表工。
岩崎弥太郎 〃〃 〃〃 〃〃 〃〃 〃〃 〃〃 〃〃 〃〃 〃〃 。
近藤 勇 武蔵(東京)清麿 天保(1830) 江戸の新新刀の代表工,虎徹に化けた。
黒田清隆 〃〃 〃〃 〃〃 〃〃 〃〃 〃〃 〃〃 。北海道開拓使。
土方歳三 関 (岐阜)兼定 天文(1532) 和泉守兼定,関の代表工。大業物。
沖田総司 備前(岡山)則宗 元暦(1184) 福岡一文字の祖,日本を代表する名刀。
桂 小五郎 〃〃 〃〃 清光 永正(1505) 末備前の代表工。
西郷隆盛 山城(京都)信国 文和(1352) 南北朝の代表工。相州伝の皆焼の名人。
勝 海舟 出羽(山形)正秀 文化(1804) 水心子。新新刀の始祖。復古刀を提唱。
大久保一翁 武蔵(江戸)虎徹 万治(1658) 一翁は初代の東京市長。大コレクター。
まだ〃〃各位の愛刀・銘刀は有るとは思いますが,今回はこの辺で止めときましょう。 皆様のお手持ちの名刀も迷刀も,お知らせ頂ければ紹介をさせて頂き度く思いますので是非お知らせ下さい。又,どんな事でも結構ですので疑問がありましたら,ご遠慮無く組合事務局(FAX 3641−9165…担当・中川)までFAXをお願い致します。
※来月はマボロシの謎刀の特集でもやりますか?ご希望が有れば切り替えますが〜。
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