東京木材問屋協同組合


文苑 随想

時代を見つめて No.48


「新タワー」(第2東京タワー)建設場所のゆくえ

時見 青風



 平成17年2月10日,墨田区曳舟文化センター大ホールにおいて,超満員の中,墨田区押上・業平橋駅周辺地区「新タワー誘致推進決起大会」が,墨田区長・衆議院議員・都会議員・区会議員等大勢出席の下,盛大に行なわれた。

 東京タワーに代わる「第二東京タワー」の構想は,これまで浮かんでは消え,消えては又各地区で浮かび上って来た経緯がある。時々新聞等で何回となく目にした事実があった。しかし,デジタル放送化を迎え,その必要性は待ったなしのところまで来て,時間がせまって来た。17年の3月末頃までには場所の決定が必要になって来たと言う。
 なかでも誘致に熱心なのが,さいたま市,(台東区),(豊島区),足立区,などである。
 さいたま市では「さいたまタワー」の実現に向けて,16年6月21日,大シンポジウムが開かれ,県知事,市長を始め,県と市が協力し合って,タワー誘致をしようという姿勢が本気であると感じられる。又9月には埼玉アリーナで2万人もの大集会が開かれたと言うし,着々と誘致の準備が進んでいる,と報道等で紹介されている。

 台東区では「仮称,台東ワールドタワー」として建設する計画,場所は隅田川沿いの「墨田公園」とその近くにある都立産業貿易センター周辺の2ケ所を提案している。

 豊島区の場合は,東京商工会議所豊島支部のメンバーが中心になって,まちづくりNPO「アーバンクリエイト21」がサンシャインの隣接地へ誘致を勧めていると報道された。

 都内の中でも,特に熱心なのが足立区である。「足立区議会新東京タワー建設促進議員連盟」が,メンバー議員を始め,足立区長を中心にして「新東京タワーを足立区へ」で,署名活動を展開していると言う。

 東京タワーは昭和33年(1958)に建てられ,現在47年になる。この高さ333メートルの塔が,NHKや民放キー局をはじめとする各種放送の電波発信拠点として果してきた役割は,大変大きいものがあったように思う。
 だが,47年前と今とでは,333mと言う高さが持つ意味合いは大きく変わってしまった。高度経済成長期,そして,バブル経済の全盛期を通じて,東京都内を中心に次々と高層ビルが立ち並ぶようになって,すっかり様子は変わったのである。
 そして,親局としての電波発信拠点である以上,高層タワーであることは必要不可欠となった。だが,もはや今の東京タワーの高さでは,電波を飛ばせる距離は非常に限定的にならざるを得なくなったと言うことらしい。
 そんなこんなで新タワーの建設用地候補には,東京タワー隣接地,秋葉原,上野,池袋や上記に記したように名乗りを上げているのが現況である。いずれも新タワーの高さは東京タワーのほぼ倍にあたる600m級のものを提案しているのである。
 これには現在の東京タワーが抱える問題を新タワーによって解消しようという意味が理解できる。
 特に,地上波デジタル放送はUHF波を使うために(この辺からむずかしくなるが)非常に直進性が強いと言う。高層タワーから電波を発すれば,それだけ親局のカバーエリアも広がることになるようである。
 加えて,地上波デジタル放送の開始とともに,高層タワーの新設が求められる理由としては,携帯電話機やPDA,車載などによる移動受信サービスが可能になるというポイントもあるらしい。地上波デジタル放送は,送信側がデータを13の※セグメントに分割して,サービスごとに1から13のセグメントを組み合せて送り,受信側で個別のサービスを選択して受ける方式を採用していると言う。
 ※セグメント(区切り,区分,部分)

 地上デジタル放送のサービスとは,
 テレビの旅・番組を見ている視聴者が,画面で紹介されている場所や店までの地図を画面上に映し出し,経路や渋滞情報を確認できる等のサービスが出来る。又ちょっとむずかしくなるが,ブロードバンド(高速・大容量通信)接続機能を利用,テレビの放送内容に直結し,刻々と変わる情報を画面に呼び出せる機能等と言う。
 この機能が携帯電話に入り,すでに発売されているが,一般化するのも間近のことであると思う。

 こんな情況の中,地上デジタル放送完全実施は2011年7月と6年後に迫ってきた。

 そして「新タワー」誘致合戦が再燃している最中,後発ではあるが冒頭の墨田区の「新タワー誘致推進決起大会」が行なわれたのである。
 そこで,三流筆者の青風もいささか関係があり,この大会に参加することになった。
 この大会の決議文をそのまま記して見た。

 現在,試行的に実施されている地上デジタル波放送は,2011年に地上アナログ波放送から完全移行され,日本の放送・通信機能は新たな時代を迎える。
 そのため,NHKと在京民放キー局5社は,テレビ放送電波を各家庭に障害なく送信できる600メートル級の「新タワー」の整備を計画している。
 この地上デジタル波への完全移行は,テレビ放送のみならず,テレビ機能付携帯電話やカーナビゲーションシステムなどの,移動通信機器への対応にも最大級の効果がある。
 さらに,近年各地での大災害の発生に対する通信機能の確保も急務となっている中,日本の中枢機能が集積する首都圏,とりわけ,日本の約1割の人口が集中する東京においては,放送・通信基盤を確固たるものにする都市防災通信機能の完全整備に果たす役割も絶大なものである。
 また一方では,新タワーの建設は,都市機能再生の役割を担うとともに,産業・文化・観光など,多くの分野への波及効果が期待できるものである。
 このような中,新タワー誘致の候補地である「押上・業平橋駅周辺地区」は,墨田区の中心部に位置し,「錦糸町・亀戸」,「上野・浅草」の2つの副都心に隣接する立地であり,現在,土地区画整理事業による都市基盤整備が進められることである。
 また,この地区は,鉄道交通アクセスに優れており,首都東京の国際空港である羽田,成田に直結するほか,関東近県からのアクセスが容易という交通至便な立地でもある。
 新タワーの実現により,押上・業平橋地区が新たな東京の観光地として生まれ変わり,東京のみならず関東近県における観光地の回遊性は大きく高まることとなる。
 その結果,東京はもとより,首都圏全体の活性化,ひいては日本全体に及ぼす経済波及効果は,計り知れないものとなることが期待できる。
 よって,区民,墨田区関連の各種団体,企業などを母体とする「新タワー誘致推進協議会」は「墨田区」,「墨田区議会新タワー誘致推進連盟」,及び「東武鉄道株式会社」と一丸となって,墨田区民の大きな期待と熱意を結集し,「押上・業平橋駅周辺地区における新タワー建設の実現」を,関係機関に対し,強く要請する。

平成17年2月10日
新タワー誘致推進決起大会


 以上がこの大会の決議文であるが,これだけの高層タワーを作るにはそれなりの広い場所が必要である。その場所が押上・業平橋周辺に再開発を推進する,東武鉄道を主体とした,約6.4ヘクタールもの土地が確保できるから,なんと鬼に金棒と言える。
 又,交通機関としては,東武鉄道,京成電鉄,地下鉄・都営浅草線・半蔵門線と4路線が乗り入れ,成田,羽田両空港への直接アクセスも良いことなど,好条件はそろっている。
 そして,事業主体としての企業,東武鉄道が名乗りを上げたのは,この墨田区誘致計画が初めてであると言う。
 東武鉄道が計画している「(仮称)すみだタワー」の=完成イメージ=を記して見ると,

 「押上・業平橋周辺土地区画整理事業」による都市基盤整備が準備されている社有地内に建設する。
 タワーの高さは約「610メートル」
 地上から350メートル地点と400メートル地点の2ケ所に展望室を設ける。
 約8100平方メートルの敷地にタワーのほか,放送施設や商業施設,レストランなどを整備する。
 概算建設費は約500億円を見込む。

 以上の計画にビデオも用意され,かなり具体的な案が発表されたが,まだまだこれからが難問。だが決定するか,しないかはその町にとって,100年の計に匹敵する大事業と思われる。
 今の東京タワーよりはるかに高い,高さ6百メートル級の世界一のタワー「夢の塔」ははたしてどこに決定するか,大変興味のある所である。

 「新タワー推進プロジェクト」
   NHK
   日本テレビ
   TBS
   フジテレビ
   テレビ朝日
   テレビ東京
  (以上,NHKと在京民放5社)

平成17年2月13日記



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