東京木材問屋協同組合


文苑 随想

時代を見つめて No.49


「竹島の日」,はたしてどうなるか

時見 青風

 竹島は日本海,島根県隠岐諸島の北西約157キロ沖に位置し,2つの小島と数拾の岩礁から成る,総面積は0.23平方キロで(後楽園ドーム5ケぐらい),周辺海域はアワビなどの水産資源が豊富であり,島根県にとっては,日本にとっても大事な魚場であった。
 韓国は1952年(昭和27年),李承晩政権の時,一方的に竹島を含む「李ライン」を設定して,日本の漁民4000人,漁船328隻を拿捕,死傷者44人を出した苦い経緯がある。
 この時,日本政府の対応について,私はくわしく知らないが,こうした実害を受けた歴史を持つ地元の人達は「節目の年に意思表示しなければ竹島の存在は風化してしまう」と危機感に思うのも当然の事だろう。

 こんな状況の中,島根県議会は17年3月16日の本会議で,「竹島の日」条例を賛成多数で可決したのである。
 条例は,明治38年(1905)2月22日の県告で竹島が県の1部となった。
 この年は日露講和条約,第2次日韓協約調印等がされている。
 この日から2005年は100年になるのを機に2月22日を「竹島の日」とすることになったのである。
 堤案理由では韓国の対応を「半世紀にわたって竹島を不法占拠し,実効支配の動きを強化してきた」と批判,採決では,議長を除く県議37人中,33人が賛成し,2人が反対,1人が棄権,1人が欠席したと言うことだった。

 「竹島の日」条例全文

 1条 県民,市町村及び県が一体となって,竹島の領土権の早期確立を
    目指した運動を推進し,竹島問題についての国民世論の啓発を図
    るため,竹島の日を定める。
 2条 竹島の日は,2月22日とする。
 3条 県は,竹島の日の趣旨にふさわしい取り組みを推進するため,必
    要な施策を講じるよう努めるものとする。

 平成17年3月16日この条例が成立したことで,竹島の領有権をめぐって,日韓関係が急速に悪化し,「小泉外交」に,かつてない閉塞感が漂って来たと各紙に書かれた。

 各紙の報道によると,韓国政府は,2005年3月17日,国家安全保障会議の常任委員会を開き,対日関係について「基礎と対応」とする声明を発表した。この中で韓国は領土,歴史問題で日本に謝罪と反省を求めたと記されている。
 声明では,最近の日本の一連の行動は,東北アジアの平和と共存を求める意思があるのか疑問を持たざるを得ない,と最近の日本の対韓姿勢に強い失望感を表明していると言い,そのうえで,日本に謝罪と反省を求め,島根県議会が可決した「竹島の日」条例撤回要求を改めて表明して来たのである。

 竹島をめぐる日韓の動き

  明治38年 閣議で竹島の日本領土編入決定
  明治43年 日韓併合条約を調印
  昭和27年 韓国が海洋主権宣言,竹島領有を主張
  昭和28年 島根県が竹島に領土標識設置
  昭和29年 韓国が竹島に警備隊常駐。政府は国際司法裁判所へ領有問題
        付託を提案
  昭和40年 日韓基本条約を調印
  平成 8年 韓国,竹島に接岸施設建設開始
  平成11年 新日韓漁業協定発効
  平成16年 韓国,竹島の切手発行
  平成17年 島根県議会総務委「竹島の日」条例案を可決(3月10日)
       「竹島の日」条例可決(3月16日)

 「竹島の日」決定前の最近の食品韓流ブームについて少々記しておきたい。
 2002年の日韓共催サッカーワールドカップ(W杯)をきっかけに韓国食品の売れ行きが好調で急拡大している。そして,さらに韓国ドラマ「冬のソナタ」の影響で再び急成長,その勢いは衰えることなく増々拡大を続けているらしい。
 日本橋のデパートの韓国食品コーナーでは冬ソナ人気に歩調を合わせて売上上昇,今年に入って前年同期に比べ60%も伸びたとわくわくである。
 冬ソナで韓国を訪問し,本場の味を知った中年の女性が来店するケースが目立って来たと言うし,特定の食材を指名買いする客も目立つ,W杯の時は若年層中心であったらしいが,ここの所,中高年まで巾広く韓国食品を求める人達が増大して来た,と記されている。
 キムチを中心とした漬物で輸入量は倍増,今や,パック入りのキムチはコンビニの定番商品と化した勢いである。
 かたや,焼酎も焼酎ブームのせいもあるが韓国産焼酎も人気が上昇中である。日本では現在「真露」と「鏡月」が二大ブランドになっており,輸入量も倍増,新聞によると,「鏡月」を扱うサントリーでは700ミリリットル瓶12本を1ケースに換算すると,平成8年に約350万ケースだった国内の韓国焼酎市場は平成16年970万ケースまで伸び,17年は,1000万ケース超えも予想されると記されている。おそろしい数字である。従来の主流は焼き肉店など飲食店向けが中心だったと言うが,焼酎ブームのせいもあって,一般家庭にも増々広がって来た。又ビール等のつまみに,ちょっと塩のききすぎがと思われる韓国産岩のりも目立つようになって来たのである。このように食の世界も韓流ブームの続く最中の「竹島の日」の出来事であった。
 最近の黒い韓流ブームについても,ついでに少々記しておこう。

 韓国から若い女性に人気のイタリア製ブランド「プラダ」などのバックや財布の偽造品を密輸入したとして,東京税関など捜査当局は関税法違反(密輸入)などの容疑で韓国人を逮捕した,と17年2月の報道である(よくある話であるが)。
 押収された偽ブランド品は約56,000点にのぼり,大半が「プラダ」だったと言う。韓国からは完成品だけでなく,一部は部品で密輸され,都内の密輸工場で組み立てられていた。露店やネットオークションで売却されたほか,パチンコ景品業者に流れた疑いもあるという。
 このように黒い方でも韓国とは深い密接な韓流ブームもあるようである。
 今年(2005年)は日韓国交正常化40周年にあたり,両国政府は「日韓友情年・2005」として,さまざまなイベントを企画していた。「竹島の日」制定に反発した韓国側から,潘基文外交通商相の来日延期の動き等見せており,外務省も対応に苦慮しているようである。又3月18日には,ドラマ「冬のソナタ」の重要シーンが撮影され,日本人観光客も数多く訪れている韓国北部の春川市が18日,友好都市関係を結んでいる岐阜県各務原市と山口県防府市,長野県東筑摩郡との各種文化交流を無期限中断すると発表した,と報道,竹島をめぐり韓国民の反発が強まって来た。
 そんな中,韓国国内では日増しに,日本への反発が高まっており,テレビ等で報道されているように,ソウル日本大使館前で,2人の韓国人男女が,日本による竹島領有権主張に対して,抗議の意思表示として,それぞれ手の指を1本切り落とした,韓国マスコミによると2人は,母親と息子と書かれている。
 この竹島の政府間交渉については,よく分からないが,領有権は,長年の歴史と国民感情が絡み合って発生した問題のようである。すぐに解決しようにも無理な難題と言えよう。
 領有権のことについて争いの発端は先にも記したが,昭和27年,一方的に「李ライン」を設定して,日本漁民を追い出したことにある,日韓国交正常化交渉でも,領有権問題では合意が得られず,棚上げにして解決を先送りしたと言う。時々ニュースに取り上げられていながら,主要漁場は,韓国漁船が我が物顔に占拠し,日本漁船は締め出されたままの状態で半世紀が過ぎた。今回の条例の背景には,政府の怠慢,漁業関係者の強い不満があるようである。
 先にも記した,良きにも,悪にも(これはよくないが)韓流ブームが盛り上っている最中「竹島の日」で水をさしては,お互いの経済活動に悪影響が出る。しかし,領土問題は国の尊厳にかかわる基本問題である。早く安心して竹島の周辺で漁業が出来るよう解決の道はないものか。

平成17年3月20日記



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