1. |
われ等は長剣を用いる,日本人は短剣を用いる。 |
☆ |
西洋の剣の刃長は75〜95cmであるのに対し,日本刀は60〜75cm程である。
これらは体躯の相違や馬体や戦闘方法により当然大きく相違してくる。 |
2. |
われ等の剣の柄は掌で握れる大きさである。彼らのは1パルモ(拳)を超え,ときには3パルモをすら超える。 |
☆ |
西洋の剣は片手用の柄で拳一つ分の寸法であるが,日本刀は両手用である。 |
3. |
われ等は剣帯に剣を付ける,彼らは帯の中の小さな鉤かぎに付ける。 |
☆ |
「帯の中の小さな鉤」とは太刀の足金物を指していると思われる。 |
4. |
我らは片側に剣を付け,他の側に短剣を付ける。彼らは常に剣と短剣とを左側に帯びる。 |
☆ |
この記述で当時すでに大小を差す事は一般化していた事が判る。 |
5. |
われ等の短剣は短い,彼らの短剣のあるものは剣の半分以上もある。 |
☆ |
脇差と西洋の短剣とを比較したようである。 |
6. |
われ等の剣には手袋が吊るされているが,彼らのには何の役にも立たない紐がぶら下がっている。 |
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下緒のことを「何の役にも立たない紐」と称している。 |
7. |
われ等は刺突武器に慣れている,日本人はそれらを全然使わない。 |
☆ |
日本では槍以外に「刺突武器」の特殊なものは無いが,西欧では剣,短剣,全て刺突を目的としている。 |
8. |
われ等に於いては貴人に最良の鉄製刀を贈る。日本では布の剣帯を添えて木刀を彼らに贈る。 |
☆ |
これは平緒を付けた飾剣のことであろう。 |
9. |
われ等の鞘には剣以外のものを入れない。日本人の鞘には一方には小刀こがたなを入れ,他方には何の役にも立たない笄こうがいをいれる。 |
☆ |
「笄」とは髪(チョンマゲ)の手入れをする道具である。 |
10. |
われ等の剣は新しくとも非常に立派であれば価値が高い。日本の剣は例え新しくとも価値が無く,たいそう古い物の方が値が張る。 |
☆ |
西欧では古名刀でも単に武器としての評価だけで,我国の如く宝物として神格化して接する風習は無く,歴史上の遺物として尊重するだけの様である。 |
11. |
われ等はせいぜい刀剣一振りと短剣一振りしか身に帯びないが,日本人はときどき刀を二本と脇差一本を帯に付ける。 |
☆ |
江戸期になると帯刀の制度は厳しくなるが,この時代には考えられます。 |
12. |
われ等のナイフには普通は木の鋲が付いている。日本のには銅または他の金属の柄が付いている。 |
☆ |
これは小柄の事を言っていると思われます。 |
13. |
われ等はナイフで切るのに,手前に向けるか又は左から右に向けて切るが,日本人は常に向こう側に切る。 |
☆ |
引いて切る日本の習慣と,押して切る西欧の習慣の相違である,刀と剣の相違がここに見られ,ノコギリとナイフの使い方が逆である事も面白い。 |