日本刀はその発祥から現代までに約1200年の歴史が有りますが,勿論それ以前の縄文,弥生時代にも石器の刀(石刀)や,それ以後の渡来刀が数多く有りそれらは主に日本各地の遺跡や古墳から出土しております。
併し,それらは日本刀とは申しません。例えそれが「正倉院御物」であってもです。何〜でか,それはネ,日本で造っている所を見た者がイナイ…から,と云う訳なのです。よって,一般的には平安中期の三尺前後の長大な湾刀が出現する迄待たねばなりません。
併し,実際には中国〜朝鮮(百済)〜日本と伝わった青銅器や鉄のルートとは別に,人類史上初めて鉄の精錬技術を見つけ,エジプトやペルシャを破り,一大強国となったヒッタイ(トルコのアナトリア地方〜BC1300頃最盛期・首都ハッテイ)よりパミール・天山北路からゴビ砂漠・モンゴル高原を抜け渤海へ入り,沿海州より日本海を渡って,千島列島・北海道・東北地方と伝わった鉄の刀が有ります。これこそ原始「日本刀」,即ち日本刀の祖形であり,その名を「蕨手刀」と云います。
今回はこの余り刀剣愛好家もご存知ない,「蕨手刀」にスポットを当てて見ましょう。
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ネーミングは手に握る「柄」が「蕨」の蔓巻きに良く似ている,よりの呼称。 |
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スタイルはトルコの半月刀の短刀と日本の短刀を足して÷2=が「蕨手刀」。 |
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鍛刀方法は異なるが刀身に肌目が現れ,日本刀の柾目,板目,等に似る物がある。 |
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伝来及び製作は古く5世紀頃,大半は日本製で古墳や遺跡からの出土品です。 |
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伝世品は数少なく,正倉院御物の一刀がダントツの優秀作。写真参照…中倉8号。 |
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分布範囲は雪の降る地域に多く,少数ですが九州・四国よりも出土しております。 |
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その多くが短刀で長い物は少ない。 |
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長物は日本刀と日本刀の亜流である,蝦夷刀とに分かれて進化をして行きます。 |
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蝦夷刀は日本刀に似ていますが,大平造りが主で鍛錬方法も造込みも違います。 |
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焼入れの温度は低く,300〜400度で日本刀の半分以下の温度です。 |
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蝦夷刀の柄が変化して立鼓形となったのが,平泉の弁慶堂の安倍貞任の太刀です。 |
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蕨手刀も立鼓刀も「毛抜形太刀」に変化してから,普通の太刀のスタイルとなる。 |