東京木材問屋協同組合


文苑 随想

お気に入り温泉シリーズ No.6


(混浴編)No.2 熊本「黒川温泉」について

湯屋 行平



 「2度とない人生だから,一輪の花にも無限の愛を注いでゆこう,一羽の鳥の声にも無心の耳を傾けてゆこう。
  2度とない人生だから,まず一番身近な者たちに出来るだけのことをしよう,貧しいけれど,こころ豊かに,接してゆこう,
  2度とない人生だから,つゆくさのつゆにも,めぐり合いの,ふしぎを思い,足をとどめて,見つめてゆこう。
  2度とない人生だから,昇る月,沈む日,まるい月,欠けてゆく月,四季それぞれの,星々の光にふれて,わがこころを,あらいきよめて,ゆこう」

 上記の詩は,坂村真民氏の「書は心」より抜粋したすばらしい一文であるが,今回お世話になった黒川で初めて露天風呂を作った宿「新明館」の主人後藤哲也氏がこよなく愛し,心をとめる詩である。
  この文面が,黒川温泉の全体に通じる,心のやさしさみたいな心情がつたわるような気がしてならない。

 上記黒川温泉の貢献者,温泉名人の異名を持つ「新明館」の主人・後藤さんの長年の苦労の一端を聞いて見ると,彼はいつも黒川温泉全体のことを気にかけていた。
  黒川全体の雰囲気作りが大切と,針葉樹の杉桧等の木を闊葉樹の雑木の植林に力を入れ雰囲気を変えて行く,春の新緑と秋の紅葉はみごとになった,そして素朴さだけでは誰も自然を気にとめない,温泉にやってきたという全体的な雰囲気でお客さんに喜こんでもらう,宿にしても同じように,一軒の宿だけでなく町全体を見てお客さんが,また来ようと思われるような町づくりに心をくばっていると,言いきる。

 秋は金木犀の花が群れ咲き,甘い匂いが温泉中をおおい,人恋しくさせたり,物思いにふけさせたり,夕暮れになると,川端通りを浴衣姿の人々が行き交い,声をかけ合うのもたのしみの一つになっていると。
  この「新明館」は,内湯男1,女1,露天が女1,混浴3となっているが,女性専用の洞窟風呂と混浴の穴風呂は,三代目当主,前にも何回も記したが,テツヤこと後藤哲也氏がお客さんに喜んでもらいたい一心で,20代の頃に独り3年かけて「ノミ」一つで,「青の洞門」禅海和尚のように掘ったと言うからすごい。
  彼は黒川温泉の組合長もされ,今は違うが。日本全国から,温泉作りの教えを乞う人が,けっこう来るらしい。
  報道2001の,黒岩祐治氏が講演の時よく黒川温泉の後藤氏を例に上げて再建の道を取り上げている。話になる話であった。

 では黒川温泉にまだ行ったことのない人のために温泉の全体像を記してみよう。

 別府から車で約1時間30分,熊本空港からも車で,やまなみハイウェイを通って約1時間30分,福岡空港からだと九州自動車道〜大分自動車道を通って約2時間30分かかる。あまり交通の便はよい方ではないが,今は全部舗装で道は大変良い。大分県の県境からちょっと入った所で熊本県の南小国町,北九州のへそに当る所で山林の中,この山の中の温泉が今や全国区の人気温泉に化した理由は一部先にも記した。
  現在,黒川には24軒の温泉宿があって,1752年(江戸時代)の創業の宿も健在である。
  宿泊料は13,000〜26,000円ぐらいで東京近辺にくらべると比較的安い方かも知れないが,交通費がかさむ難点がある。
  さて表題の混浴について記して見ると,24軒はすべて露天風呂は完備しているが,混浴出来る宿は24軒中,11軒で男女一緒に入ることが出来る。内湯の外に男女別の風呂はかならずあるので,いつでも女性と一緒と言うわけにはいかないが,混浴宿をえらんだ女性客には興味の露天風呂である。

 混浴露天風呂のある宿,(黒川外線)0967,
  1「やまびこ旅館」 仙人風呂 (44)0311 
    収容人員 90人  泉質 ナトリウム塩化物,他
  2「山河旅館」 もやいの湯  (44)0906 
    収容人員 60人  泉質 硫化水素泉,他
  3「ふもと旅館」 もみじの湯 (44)0918 
    収容人員 55人  泉質 硝硫化水素泉,他
  4「御客屋旅館」 代官の湯  (44)0454 
    収容人員 45人  泉質 ナトリウム塩化物,他
  5「新明館」 岩戸・洞窟風呂 (44)0916 
    収容人員 50人  泉質 硫化水素泉,他
  6「いこい旅館」 美人湯   (44)0552 
    収容人員 47人  泉質 硫黄明バン食塩硫化水素泉,他 
  7「奥の湯」 奥の湯     (44)0021 
    収容人員 126人  泉質 ナトリウム塩化物,他
  8「夢龍胆」 天女・龍胆の湯 (44)0321 
    収容人員 114人  泉質 ナトリウム塩化物,他
  9「いやしの里」 樹やしき,満天の湯 (44)0326 
    収容人員 41人  泉質 硫黄ナトリウム塩化物,他
 10「帆山亭」 天狗・仙女の湯 (44)0059 
    収容人員 50人  泉質 硫黄ナトリウム塩化物,他
 11「山みず木」 森の湯    (44)0336 
    収容人員 96人  泉質 ナトリウム塩化物,他

 以上11宿が混浴露天風呂で四季折々の風情の中を心おもむくままに,カラコロと鼻緒の下駄をならし,黒川名物,露天風呂めぐりが楽しめる。この温泉では,入湯手形なるものを1200円也で買うと,すきな宿のすきな露天風呂に3軒入浴出来て楽しめることが,ここ黒川の大目玉になった。
  どうです,混浴も楽しめる「黒川温泉」は,上記の電話に直接しても予約は受けてくれる。皆さん,行ってみませんか。

平成17年6月26日記
※黒川温泉の町を見守って来た伝説の身代りお地蔵様,新明館のすぐ近くに
あった。
※黒川温泉の町並み,旅館が24軒あるが木造が多い,おちついた雰囲気では
ありませんか。この橋の下の川は「田ノ原川」と言う。
※新明館の玄関,入浴手形を持った他宿の客もここから気軽に出入りする
ことが出来る。
※後藤哲也氏が3年がかりで掘ったと言う洞窟風呂この奥に穴風呂もある。



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