時代を見つめて No.52
「東京オリンピック」実現に向けて
時見 青風
2016年(平成27年)(11年後),夏季オリンピックの立候補都市に東京都が名乗りを上げた。
日本国内ではすでに,札幌と福岡が立候補を表明している。
札幌市は17年3月の市議会で,夏季オリンピック招致の決議を可決。「世界で例のない冬,夏オリンピック開催」を目指す方針が決まっていると言う,現況では各種資料を中心に情報収集の作業が行われているようだが,オリンピック開催に向けては財政面での問題を指摘する声も上がっていると言う。正式に立候補するかどうかなどについて,まだ未定のようである。
一方,福岡市は17年4月にJOCとパートナー都市協定を締結した。福岡市の現人口は約140万人の国際的には中規模都市と言うことだが,今のところ,九州各県で分散開催する「九州オリンピック」の構想が持ち上がっていることのようで,正式立候補への準備を進めている段階と言われる。
さて,2016年のオリンピック開催都市決定までの動き・流れがどうして決定するのか調べて見ると,2007年(平成19年)にIOCからの開催都市立候補の公募があると言う。現在すでに立候補を表明している世界の国々は報道によると下記の通りである。
順不同であるが記して見ると,
ブリュッセル(ベルギー)
ミラノ (イタリア)
ローマ (イタリア)
ニューデリー(インド)
キエフ (ウクライナ)
ワルシャワ (ポーランド)
立候補を申請した都市は「開催計画書」をIOCに提出する。
IOCは審査して,評価による絞り込みを行ない,2008年(平成20年)理事会で5都市程度を候補都市として選出する。
2009年(平成21年)初めに,候補都市はIOC評価委員会の訪問を受け,同年夏のIOC総会で,委員の投票により開催都市が決定されると言う。投票は過半数を得る都市が出るまで,最下位都市がふるい落とされ,繰り返される方式になる予定とのことである。
現・石原都知事が夏季オリンピックに名乗りを上げた東京都のこと又場所について,少々調べて見ると,23の特別区と26市5町8村から,もちろん伊豆の離島も含めての総合であり,総面積は21万8709平方キロメートル。人口は約1253万人(うち女性約629万人)で都市としては,世界第3位(2004年現在)である。
又主なスポーツ施設は東京オリンピック開催時(1964年)に建設された国立競技場(新宿区)と代々木体育館(渋谷区)又東京体育館(渋谷区)があるし,又日本武道館(千代田区),有明コロシアム(江東区),駒沢オリンピック公園総合運動場(世田谷区),東京辰巳国際水泳場(江東区),夢の島体育館・運動場(江東区),それにワールドカップで出来た調布市の今では味の素スタジアム等,更に民間を使えば,かなりの施設,場所は確保出来る。
夏季オリンピクの開催都市を記してみる。
回 |
開催年(日本年) |
開催地 |
国 名 |
参加国数 |
第1 |
1896 |
明治29 |
アテネ
|
ギリシャ |
13 |
2 |
1900 |
明治33 |
パリ
|
フランス |
20 |
3 |
1904 |
明治37 |
セントルイス
|
アメリカ |
11 |
4 |
1908 |
明治41 |
ロンドン |
イギリス |
22 |
5 |
1912 |
明治45
大正 1 |
ストックホルム |
スウェーデン |
28 |
※6 |
1916 |
大正 5 |
ベルリン |
ドイツ |
− |
7 |
1920 |
大正 9 |
アントワープ |
ベルギー |
29 |
8 |
1924 |
大正13 |
パリ |
フランス |
44 |
9 |
1928 |
昭和 3 |
アムステルダム |
オランダ |
46 |
10 |
1932 |
昭和 7 |
ロサンゼルス |
アメリカ |
37 |
11 |
1936 |
昭和11 |
ベルリン |
ドイツ |
49 |
※12 |
1940 |
昭和15 |
ヘルシンキ |
フィンランド |
− |
※13 |
1944 |
昭和19 |
ロンドン |
イギリス |
− |
14 |
1948 |
昭和23 |
ロンドン |
イギリス |
59 |
15 |
1952 |
昭和27 |
ヘルシンキ |
フィンランド |
69 |
16 |
1956 |
昭和31 |
メルボルン |
豪州 |
67 |
17 |
1960 |
昭和35 |
ローマ |
イタリア |
84 |
18 |
1964 |
昭和39 |
東京 |
日本 |
94 |
19 |
1968 |
昭和43 |
メキシコ市 |
メキシコ |
115 |
20 |
1972 |
昭和47 |
ミュンヘン |
西ドイツ |
122 |
21 |
1976 |
昭和51 |
モントリオール |
カナダ |
94 |
22 |
1980 |
昭和55 |
モスクワ |
ソ連 |
81 |
23 |
1984 |
昭和59 |
ロサンゼルス |
アメリカ |
140 |
24 |
1988 |
昭和63 |
ソウル |
韓国 |
160 |
25 |
1992 |
平成 4 |
バルセロナ |
スペイン |
174 |
26 |
1996 |
平成 8 |
アトランタ |
アメリカ |
194 |
27 |
2000 |
平成12 |
シドニー |
豪州 |
200 |
28 |
2004 |
平成16 |
アテネ |
ギリシャ |
202 |
29 |
2008 |
平成20 |
北京 |
中国 |
? |
30 |
2012 |
平成24 |
ロンドン |
イギリス |
? |
31 |
2016 |
平成28 |
?東京 |
? |
? |
32 |
2020 |
平成32 |
? |
? |
? |
※は戦争のために中止となった。
◎アメリカ4回
◎イギリス4回(内中止1回,内定1回)
◎フランス2回
1964年(昭和39年)東京オリンピック大会は10月10日から15日間,東京を中心に埼玉,神奈川,千葉,長野県の各地の協力により開催された。そして,今年の愛知万博の参加国は日本も含めて121ケ国であるが,この時の昭和39年東京オリンピックは94の国・地域が参加している。そして20競技163種目を競った5,558人(内女子732人)が出場したと記録されている。そして日本選手団は437人(内役員82人)出場し,なんと金メダル16ケ,銀メダル5ケ,銅メダルの計29個を獲得し,話題になった事を覚えている。金メダルの内訳は団体・個人の体操5,レスリング5,柔道3,ボクシング1,重量挙げ1で,「東洋の魔女」と呼ばれた女子バレーボールも初の世界一をつかみ,大変なさわぎであった。
当時,私の会社が国立競技場建設に関係があって世界の国の国旗を上げるポールを受注することになり,10m以上の木材の丸太を納入するのに苦労をした事を思い出した。当時はまだ今のような,長いアルミやスチールがポール使用としてはなく木材使用となった。検品にはコロコロと廻わして,筋の良いものしか通らず,選別した500〜600本の中から101本を吉野材で納入した,又当時はまだ仮設材は杉板やエゾ板をあいじゃくりして使った時代で,このオリンピック建設の時はどこの材木屋さんも大忙がしで大変だったと思う。今から考えれば大変良き時代であったと言うことになる。
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※1964(昭和39)年日本の国立競技場での超満員東京オリンピックの会場である。白色のペンキで塗ったポールが目立っている。94ケ国の旗がなつかしい。カラーでないのが残念だが,手前の真赤なブレザーの日本選手団が見える。 |
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※超満員の中に聖火台が見える。94ケ国参加の41年前の貴重な写真。 |
さて,世界3番目の人口を誇る東京が50年の時を超えてオリンピックの招致へ動き出した。やっと腰を上げたのかと言っていいのでは,とも思う。
東京は網の目のように張り巡らされ,正確に運行する鉄道があり,渋滞緩和のために高速道路網も広がり,ETC等を進めることにより,徐々に整備されて来た。先にも記したが,スタジアムや体育館などのスポーツ施設にも問題はなく,既存のモノで十分カバーが出来るのが東京の強みでもある。
日本では1964年の東京オリンピック以来,夏季オリンピック開催地を決めるIOC総会で2度苦杯をなめてきた。1988年(昭和63年)名古屋がソウル(韓国)に負け,2008年(平成20年)大阪が北京(中国)に,同じアジアの都市に敗れてしまった。
2005年(今年)7月,2012年オリンピックの開催都市はロンドンに決まった。最終決定の仕組みについては前に記したが,最終投票に残った候補は,パリにニューヨーク,マドリード,モスクワと大都市ばかりである。
オリンピック開催中は,最近は200の国,地域から一万人を超える選手をはじめ,役員,コーチ報道陣にスポンサー,そして観客と,中規模都市ができあがる。それらの人々の宿泊施設,また輸送網などのインフラ,警備問題に加え,三千億円にも及ぶ運営費を支える財政規模も必要と言うし,さらに前にも記したが,競技施設の整備と後利用まで考えれば,オリンピックは大都市開催でなければ,むずかしい事が分かる。
IOC委員の間では,そうした大都市でのコンパクト開催に賛同が集まりやすい事はよく分かる話である。
実際,今年2012年のオリンピックが決まったロンドンも主要会場を11キロ以内に収めるなど都市集中型を訴えたことが高評価につながり,パリ,ニューヨーク,マドリード,モスクワをおさえ決定したと記されている。
東京は世界でも有数の交通網の発達した都市であり,64年東京オリンピックはもとより,91年世界陸上競技選手権などの大規模競技会や,先進国首脳会議をはじめとする国際会議開催の経験も大変豊富であると同時に,既存施設,前にもいろいろと記したが,これらの再利用と,お台場や羽田空港など湾岸地区の整備と連動すれば,アピールしやすいのではと言う話も出て来て当然である。
オリンピック招致について,どんな方法をとるのか,これから具体的な計画を立て誘致に全力を傾注し,是非,実現し開催してほしいと思う一人である。
平成17年8月27日
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