東京木材問屋協同組合


文苑 随想

見たり,聞いたり,探ったり No.68


「自然の叡智」
「愛・地球博に行ってみよう」
愛知万博 No.6「閉幕」

青木行雄


 185日に亘って開かれた愛知万博は,2005年(平成17年)9月25日(日)午後10時に閉幕した。
 日本では1970年(昭和45年)の大阪万博以来,35年振りの総合的な国際博覧会であったが,3月25日の開幕日からの入場者総数は目標の1500万人を700万人も上回り,22,049,544人であった。
 「大きな地方博」という声もあったが,実際には国内外から多くの人々が訪れた。「日々改善」で万博を軌道に乗せた。
  閉会式は25日午後1時50分から長久手会場のEXPOドームで始まり,関係者ら約2,250人が出席したと言う。私は旅行中だったので九州の飛行場待合室にて約1時間,閉会式を見ることになった。
  博覧会協会の中村利雄事務総長が開式の辞を述べ,豊田章一郎会長は「この博覧会が果たした役割は実に大きく,万博の輝かしい歴史に新たな1ページが加わった」と挨拶した。次いで小泉純一郎首相がマイクの前に立ち,「ものを大切にする『もったいない』という心が世界中に広がり,人間と自然が共生する新らしい社会が実現してほしい」と話した。
  博覧会国際事務局の呉建民議長(中国)は「サラゴサ万博と上海万博の成功の道筋を開く」と愛知万博の成功をたたえた。
  愛知万博名誉総裁の皇太子殿下は「訪れた多くの人々の1つひとつの感動が全世界に広がってさまざまな地球規模の問題に立ち向かう大きな動きとなることを心から希望する」と述べられた。特に見ていて私の印象に残ったのは,小泉総裁,皇太子ご両人共に万博で販売されていた,モリゾー,キッコロの入った斜め線の同じネクタイをされていたことである。もちろん私も買入していたものと同じであった。
  話は横道に逸れたが,皇太子のご挨拶の後,続いて,BIE旗の引き継ぎ式があり,呉議長がサラゴサ市のホアン・ベジョック市長と次の開催地・上海市の周禹鵬副市長にそれぞれ旗を手渡した。
  9月25日,閉会式の当日の午後,関東付近に台風17号が接近し,着陸出来るかと早目の飛行場行きであった為に閉会式をテレビで見ることが出来た。特に関心を持っていた私にとって,不幸中の幸で無事飛行機は東京に飛び,帰る事が出来た。

 最終日の25日は開門前に徹夜組も含めて計4ゲートに過去最多の約41,300人が並んだと言う。西ゲートでは行列が会場外の一般道路へ最長3キロ以上延び,定刻より50分も早い午前8時10分に開門した。この日だけで,244,052人が入場したと言う。閉幕を惜しむ「さよならパーティー」などが催され,午後10時の閉門まで大勢の客で混雑したようである。
  私も是非閉幕式には行きたいと前々から思っていたが,別の用件で叶わなかった。

 新聞報道等による万博協会まとめの数字を記して見ると,リピーターは約440万人となるようである。大人1枚17,500円払うと何回でも入場出来る券があり,普通入場券は4,600円だったので4回入場すれば元が取れる。「お値打ち」好きな名古屋人の心をくすぐったようであった。このリピーターの1人当たりの平均入場回数は10.08回とデータが出たようだ。
  6月〜9月に実施した外国人調査では,台湾からの入場者が18.8%で最も高く,韓国15.7%,米国13%,中国11%と続くが,けっこう外国人も多かった事になる。
  日本国内では,遠方からの集客に強い危機感を抱き続けた博覧会協会は開幕前,関東や関西で懸命にPRを続けた。
  ふたを開ければ,地元の愛知県内は43.8%と半数足らず,関東地方からは15.2%,関西は12.4%だったようである。
  迷子の件数は,9月19日までの集計で,505人であったとのことである。会場全体を見渡せるメーンストリートの役割を果したグローバル・ループ(空中回廊)が横幅の狭い構造で,迷子になりにくかったことや,携帯電話の普及が功を奏したと見られている。
  心配された熱中症も,入場者自身が予防に気をつけたほか,日除けの増設,冷水器の設置などで,194人にとどまったと言う。

※来場した海外要人(元首級)
  シラク仏大統領,ケーラー独大統領など46人が来日入場した。
※延べボランティア,100,354人
  2月の登録時は29,214人で,1人3〜4回参加。
※市民団体,335団体
  市民パピリオンと地球市民村に出展。
※市民パピリオン,235種類
  万博史上初の市民によるプログラム数。
※拾得物個数(19日まで),26,939個
  1日当り 150個。
※黒字額 100億円ぐらいらしい。
※経済効果 1兆2,822億円
  建設関連8311億円など,共立総合研究所試算。
※万博消防署出動回数 約1000回
  マンモスラボ屋上など火災2件,救急約1000件。
※ごみの総量 約4800トン
  9月18日現在で,入場者1人当たり換算で230グラム。
※百貨店売上高,2300億円
  3−8月の名古屋市内の5百貨店,前年同期比6.3%増であった。
※公式グッズ販売額 約800億円。
※東海道新幹線の累計輸送量7%増。
※ホテルの稼働率 98%
  名古屋マリオットアソシアホテルの平均,ヒルトン名古屋も96%であった。
※「リニモ」乗降客数 1950万人
  当初の目標1560万人で 390万人の増。

 万博には多くの外国人が,期間中にイベント出演などで入国した。その内8ヶ国の計約30人が失踪したと愛知県警が発表した。閉幕したばかりの27日のことである。一部はビザ(査証)の期限が切れて不法滞在の状態になっており,県警は不法就労のおそれもあるとして行方を追っていると言う。発表した失踪者の国籍はインドネシア,インド,パキスタン,カメルーン,セネガルなど8ヶ国。4月にナショナルデーの行事に参加したセネガルの一行から20代と30代の男性2人が失踪,帰国予定の同月15日を過ぎても帰国せず,関係者が万博協会を通じ,県警に家出人捜索願を出したと言う。

 愛知万博に続き,2008年(平成20年)はスペイン北東部のサラゴサで「水」をテーマにした小規模な万博(認定博),2010年(平成22年)には中国の上海が「都市」をテーマにした大規模な万博(登録博)を開催することになった。

 スペインで開催されるサラゴザ万博は「水と持続可能な開発」という具体的なテーマに特化した小規模な万博のようで,開催期間は2008年6月14日から9月14日までであり,600万人〜800万人の入場者を見込んでいるようである。開催地であるサラゴサ市は,人口65万人のスペイン第5の都市である。アラゴン州の州都で,首都マドリードと第2の都市・バルセロナのほぼ中間点にあり,交通の便に恵まれていると言う。山に囲まれた半乾燥地域で,干ばつなどに悩まされた歴史があるらしい,かつて水をめぐる争いもあったと言う。水を大切にする意識が根付いている国柄らしい。会場では世界中で行われている水資源運用の方法などを集めて展示する予定と記されている。地中海に隣接するスペインのサラゴサがどんな所か,行った事がないから想像もつかないが,エブロ川があって,この川沿いに,150万平方メートルの大規模な公園も出来て,公園には温泉スペースやビーチも設けると言うから,どんな所か興味は湧いて来る。

 2010年(平成22年)5年後の上海万博についても少々,各紙の報道より記しておきたい。
  上海万博のテーマは「よりよい都市,よりよい生活」「都市」をテーマにした初の万博ということらしい。サブテーマは「都市の多様な文化の融合」「都市経済の繁栄」「都市の科学技術の進歩」「都市コミュニティーの再生」「都市と農村の連動」の5つと記されているが。期間は2010年5月1日から10月31日までの184日間に亘っての開催で,参加は2百の国・国際機関と記されており,入場者目標はなんと7,000万人,万博史上最多の目標となると言う。面積もかなりの規模で計画は5.28平方キロとこれまでの万博では最大級らしい。
  いずれにしても,上海はそう遠い所ではないので,行って見たいとも思う。
  注目展示品の行き先
※最大の呼び物であった「冷凍マンモス」についてはどうなるのか,日本が引き取るのかとも思っていたが,結局,故郷のロシア連邦サハ共和国に帰国することになった。185日間,多くの人々に感動を与えた2万年も前の「マンモス」よ,2度と合うことは出来ないが,大変御苦労様でしたと,手を合わしたい心境である。
※とうとう一度も見ることが出来なかった「サツキとメイの家」,映画「となりのトトロ」で主人公姉妹が暮らす家を再現したもので,あれ程人気ものになるとは思わなかったが,大変な人気だった。この家の行き先については各自治体が誘致合戦を繰り広げたと聞いているが結局,愛知県に無償譲渡で現地に存続することになった。
※西ゲートから一番先に見える大観覧車,まん中に映像が映り,モリゾーやキッコロの顔がよく見えた。この大観覧車,地元の自治体の強い希望で愛知県が5年に限って残す方針を出したと言う。近くに高い建物がないので,乗って見ると素晴らしい景観であった。
※ヨルダン館の「死海の水」,興味はあったが入館出来なかったのでここは体験出来なかったが,老神温泉の旅館で,同じ水かは分からないが,体験した事がある。塩分が高いため体が全く浮いてしまう。この「死海の水」は愛知県内の高校に寄贈されると言う。
※会場は愛知県が新たな都市公園として整備,前記の「サツキとメイの家」と「迎賓館」,会場を円で結んでいた空中回廊の一部を除き撤収される。
※経済効果は前にも少々ふれたが,報道機関により多少,見方も違い数字も異なるが,入場券収入は,予想を150億円上回る400億円以上だったと記されている。又,グッズ販売も予想をはるかに上回り,200億円増の800億円だったようである。そして名古屋土産などもかなり売上げがあって,消費関連だけで効果は4500億円以上とか,又愛知,岐阜,三重の東海3県の経済効果は1兆2000億円以上に上ったとの試算もあるとされているが,大変な効果で,後半には近隣のホテル,旅館はどこも満員という話を耳にした。大成功の内に閉幕した愛知万博に乾盃をささげたい。
 自然のかけがえのなさと環境への配慮の大切さを人々の胸に刻み,行列の待ち時間の長さは目立ったが,“市民参加型の展示”という従来の万博にはなかった特徴がムード盛り上げに一役買ったと言うし,経済面で好調な名古屋・中部圏パワーにも支えられての大成功だったと思う。
 それにしても関係者や関わりのあった業者やスタッフや従業員,パートの皆様ご苦労様でした。

平成17年10月10日記
※西口ゲートの左側にいた受付ロボット。なかなかの美人であり,話も出来た。
 
※市民参加の市民パビリオン,瀬戸会場。ほとんどが木造であった。

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