E 刃文ハモンの種類 |
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「刃文」 |
刃と平地の境に意識的に焼刃土を盛って焼入れの折りに作り出す紋様。
此れにより各流派の特徴が顕著に現れ作者を判定し易くなります。 |
「焼入れ」 |
7〜800度に加熱した刀身を冷水に差し込むと,薄い作りの刃の部分と厚い地の部分に硬度の差による沸と匂という変化が生じ刃が出来ます。 |
「沸(ニエ)」 |
粒子の最も硬い部分でマルテンサイトと云い肉眼で捉える事が出来ます。 |
「匂(ニオイ)」 |
中位に硬い部分でトルースタイトと云い目には見えずボーと霞んでいる。 |
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夜空にキラキラと輝く星が沸で,天の川の様にボーと霞んで見えるのが匂い,どちらも切れ味には関係は無く,切れるか切れぬかは切手の腕次第であります。 |
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1 直刃すぐは |
往古から各派に有る。細,中,太,とあり製作は一番難しいと云う。 |
2 小乱こみだれ |
無作為に焼刃土を置いて焼くと小乱れになると云われる,平安後期。 |
3 互の目ぐのめ |
波形が一定の間隔で続く,各派に有り新刀の涛乱刃の原型,鎌倉末。 |
4 丁子ちょうじ |
丁子の花に似ているのでこの名がある,鎌倉前期の備前の名刀に多い。 |
5 蛙子丁子かわずこ |
丁子の変形でオタマジャクシの如き紋様,鎌倉中期以降に多し。 |
6 拳形丁子こぶし |
拳を連想する形,これに映りが入ると備前以外には考えられない。 |
7 簾刃すだれは |
美濃の大道の子供の京丹波・大阪丹波の吉道系の独占刃文,新刀。 |
8 湾れのたれ |
3の互の目の変形でゆったりした波の形,南北朝期に発生する。 |
9 濤爛とうらん |
互の目から進化,荒海の波頭のイメージ,大阪新刀の助広の創始。 |
10 皆焼ひたつら |
高温で全体を焼くので技術的にはかなり難度,相州広光,秋広。 |
11 三本杉 |
関(美濃)の専売特許,特に孫六兼元一門に多くトレードマーク。 |
12 珠数刃じゅずは |
珠数刃じゅずは 丁子と互の目の中間の刃文,長曽根虎徹の創始と云う,新刀。 |
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これらの刃文は数種類が混合したり類似して焼かれている場合が多く見られます,大体が流派の基本形から発展をしておりますので「五カ伝」の復習が必要でやんす。 |
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F 鍛 肌(きたえはだ)=地 鉄(じがね) |
鉄を折返し鍛錬を続けると様々な模様が現れ,流派の特徴を看て取る事が出来る。 |
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1 板目肌 |
木材の板目と同様であるが,その大小により大板目,小板目と呼ばれる肌模様が現れ,それが肌立つものや沈みこごろのもの。流れるものなど種〃の肌模様がある。 |
2 杢目肌 |
材木を横に切断したときに出る年輪の如き肌目のこと,これも肌模様の大小によって,大杢目・小木目どの別がある。 |
3 柾目肌 |
材木を真中から縦に切断すると,柾目になるがこれに似た肌目を云う。古刀では大和保昌,新刀は仙台国包,新〃刀は水戸徳隣,等が有名なり。 |
4 綾杉肌 |
波状の曲線模様の肌の事,奥州の月山一門の特徴であり月山肌とも言う。 |
5 松皮肌 |
松の表面の肌に良く似ていて,越中の郷則重が得意で則重肌とも云う。 |
6 小糠肌こぬか |
板目や杢目の肌がもっとも細かく沸づいた肌。新刀の肥前刀の専用語。 |
7 梨子地肌なしじ |
梨の実の切断面を見るが如き地沸の美しい肌,山城來や粟田口一門。 |
8 縮緬肌ちりめん |
小板目の杢が混じり,チリ〃〃と肌立つた感じの鍛え肌,青江一統。 |
9 八雲肌やくも |
混ぜ鉄により,もくもくと雲を思わせる肌で水戸の烈公の作に見る。 |
10 無地肌 |
鍛錬が多過ぎ,小板目が詰みすぎ鏡の如くになる,新〃刀に限り見る。 |
日本刀の鍛肌の殆どが板目である。折返し鍛錬の回数により大板目,小板目となり,更に回数が増すと無地がねとなってしまう。では如何にしてその特色を出すかと云えば,火造りで刀の形にかねを延ばす為,板目が全く流れ無いのは皆無に近く,流れごころや柾がかるものが有り,その場所が伝法や流派により異なるので,この点が見所となり,加えて地金の働き等から時代と系統を推測し,特別な肌から個名まで知り得る物も有る。併し他に,姿,刃文,帽子,等の全てを検討し流派や個名を決めるのは当然である。 |
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J 帽子の刃 |
帽子の大小の形状は時代の特徴を現し,帽子の刃は流派や刀工の手癖や巧緻を知る上で大切な見所である。 |
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1 焼やきづめ |
横手より切先の突端までフクラに添って棟まで焼刃のあるもの。 |
2 小丸こまる |
切先の先端近くまで刃文を描き,先が小さく丸く棟に返るもの。 |
3 大丸おおまる |
小丸よりも大きく,丸形に返ったものを言う。 |
4 掃はきかけ |
切先の返りの部分が箒で掃いた様に見えるもの,一定の形を取らぬ。 |
5 丁子乱れ込み |
丁子風の焼刃のままで乱れこんだものを云う。 |
6 地蔵じぞう |
石に刻んだ地蔵の像を側面から見た形に似ている刃文のこと。 |
7 火炎かえん |
あたかも火炎の如く,盛んに尖りごころとなる刃文を云う。 |
8 一枚いちまい |
切先の焼きが横手下で止まり,帽子全体が焼刃で覆われたもの。 |
9 沸にえ崩れ |
刃文が盛んに沸づいて乱れ,まとまりの無いものを言う。 |
10 のたれこみ |
のたれこんで,返ったり,掃きかけたり,焼き詰めたりしたもの。 |
11 返り |
切先の焼刃が下に焼き下げた部分を「返り」といい,その長短を云う。返り浅し(短い),返り深し(長い),返りが堅い(返りのトメが堅い)。 |
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これにて一応「入門編」を終了とさせて頂きます。9月からの4ヶ月でしたが,いま一度読み返して頂ければ,今後どこで刀と遭遇しても子供さんや素人さんが相手ならば,それなりに説明は出来ると思いますのでお試し願います。
次は「中級編」となりグレードが少しアップ致しますが,未だその後に「上級編」が控えて居りますので気を抜かずに頑張って付いて来て丁髷。
※10月号のクイズの答えは11月号に載っておりますので,ご参照下さい。
正解者。天位 森林慎介殿 賞品…玉鋼の記念サンプル…の関係で今回は一名とします。 |