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1 .直刃 …真っ直ぐな刃文…,広直刃,中直刃,細直刃(糸直刃)。 |
イ. |
直刃のみで働き(刃中の変化)の少ない物,働きの多い物。 |
ロ. |
匂,出来か,沸,出来か。(匂い,沸え,共に前回説明済み)
匂口や巾の広い物=郷義弘,井上真改,津田助広,肥前忠吉,一竿子忠綱。
匂口が潤む物=古い九州物,行平,西連,波平,等。
節,尖り刃,の交じる物=美濃(関)系統の物は全般にこの傾向が有る。
食違い刃=来,了戒,当麻,手掻,保昌←古刀,国包,重国,下坂,貞国,忠吉。
逆足,逆乱れ,鼠足,混じる物=来,景光,元重,鵜飼(雲類),青江,古刀多し。
打ちのけ,掃掛け=大和伝全般,粟田口国吉←古刀,南紀重国,越中守正俊←新刀。
直刃で乱れる=山城物,大和伝,古備前,景光,元重,兼光,雲類,主に古刀。
直刃で丁子乱れ=国行,二字国俊,古備前,長光,景光。古刀の名刀が多い。
直刃に互目=虎徹,法城寺,越前下坂,左行秀(特伝←新刀になってから出来た刃文)。 |
2 .乱刃 …様々な乱れがある。 |
イ. |
小乱れ=小さく規則的に乱れた物,吉井一類,等。新刀は焼巾が広くなり少なし。 |
ロ. |
大乱れ=相州伝に多く,のたれる感じ。 |
ハ. |
腰開き=備前伝に多い,蟹の爪の如き刃文,祐定,等。 |
ニ. |
逆乱れ=元重,備中青江に多し。 |
ホ. |
丁子乱れ(丁子の花に似る)=大丁子,重花丁子,蛙子丁子,拳形丁子,逆丁子,等。
丁子乱れで沸づく物は,山城,古備前,助真,古青江,古一文字。
丁子に足が長く入る物は新刀が多い,肥前等。 |
ヘ. |
互の目乱れ=信国,長義,左,直江志津,宇多,高田,堀川一門,他。
片落ち互の目=備前伝に多く,景光,兼光,倫光,基光,元重。
互の目丁子=美濃伝に多い。
互の目の揃った物,連れた物=吉井,兼元,兼房,村正,虎徹,法城寺。
三本杉乱れ=孫六兼元,…後代は鋸刃。
箱乱れ=美濃伝,千五村正,駿州島田,御紋康継,長曽根虎徹,兼若,等。
矢筈乱れ=美濃伝,村正,東山美平。
馬の歯乱れ=新古共に相州伝。
数珠刃=虎徹一門。 |
ト. |
湾れ=大湾れ,小湾れ,湾れ仕立て乱れ,湾れに互の目。
正宗,貞宗,志津,左,長義,兼光,郷,信国,以上の如く古刀は相州伝に多し。
堀川一門,三品一門,越前康継,長曽根虎徹,小野繁慶,肥前忠吉。 |
チ. |
皆焼=刀の平や鎬地にまで,飛び焼き等が入る物。皆刃,飛多面とも書く。
相州伝に多し。広光,秋広,長谷部国重,国信,島田,村正。新刀,水田国重。 |
リ. |
簾刃=元禄が過ぎ泰平の世が続くと刀はトント売れ無くなり,販売強化で登場した刃文。大阪の丹波守吉道二代の創始で一門が独占。菊水や富士見西行の模様を写す。
丹波守吉道の創始と云い,三品一門の独占的刃文。 |
ヌ. |
寿乱刃=寄せ来る波の如き刃文。新刀,大阪の津田越前守助広(二代)の創始。
近江守助直,板倉言之信照包,水心子正秀,手柄山正繁,尾崎助隆。市毛徳燐。 |
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3 .帽子
人間に例えれば顔に当たり,帽子の出来により刀の品位が決まる。 |
イ. |
表裏が同じか,異なるか。 |
ロ. |
丸帽子,小丸,大丸,小丸あがり,小丸さがり。 |
ハ. |
湾れ込み。 |
ニ. |
突き上げ帽子(先尖る),地蔵。 |
ホ. |
乱れ込み。 |
ヘ. |
焼詰め,掃掛け,火炎。 |
ト. |
一枚。 |
チ. |
丁子乱込み。 |
リ. |
沸え崩れ。 |
ヌ. |
横手,細い。 |
ル. |
返り寄る,返り硬い,返り深い(焼き下げる),帽子倒れる。 |
オ. |
一文字返り(郷義弘)。 |
ワ. |
この他。
青江帽子,三作帽子,滝落し(虎の尾)帽子,長義帽子,左帽子,兼光(ろうそく)帽子,村正帽子,京帽子,三品帽子,江戸帽子,虎徹帽子,肥前帽子,南紀帽子,等。
それぞれの特徴を捉えて呼ばれている。 |
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4 .樋。 |
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丸止め,角止め,掻き出し,添樋,樋先の位置,樋幅,両チリ,片チリ,等がある。 |
5 .彫物。 |
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各時代,各産地,流派に名人が居る。
行平,信国,総宗,埋忠明寿,宗長,虎徹,義胤,一竿子,直胤,月山,助隆。 |
6 .中心(茎)。 |
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各流派により独特の形がある。
毛抜形,雉子股,タナゴ腹,振袖,尻張り,剣形,栗尻,刃上がり栗尻,切り。 |
7 .鑢目。 |
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せんすき,桧垣,切り,筋違い,大筋違い,逆筋違い,平は筋違いで棟は切り,等。 |
以上,刀の見所をザァ?と並べて見ましたが,お判りになりましたか,先ず八割の方がチンプンカンプンでしょう,然しそれでも良いのです,太刀と刀の違いが判っただけでも大進歩です,因みに太刀は刃を下にして吊るす,抜いて振り上げて振り下ろして切ります,二段モーション,時代は平安末期から室町中期まで,刀は刃を上にして腰に差しますので,抜き打ちが可能です,スピードが違うので室町末期には実戦ではあらかた刀となりました。
これらを少し膨らませればミュージアム等で外人には堂々と説明が出来ます,外人から見ればそれだけで貴方はその道のプロであり,日本文化のオーソリティなのです。
実際の鑑定会ではこれ等の事を瞬時に判断して刀工名を当てなければならないのですが,これが至難の業でして,座っただけでピタリと当てるにはかなりの年季がいります。
では,実際のプロの刀屋とはどの様な業態なのかを少し説明して見ましょう,刀屋には大雑把に申せば二通り有り,?家業としての世襲,?愛好者がのめり込んでの開業,このどちらかなのです。?の場合は受け継がれて来たノウハウも其れなりに有り,且つ店を構えて暖簾を張って居りますので,?と比べれば危険は少ないと思います。但し材木屋と同様で三代続いての盛業はかなり少ない,何んででござんすかぃね?。?この答えは後程。?は入れ込んでオタクになったサラリーマンの脱サラか,定年退職者のオープンが多い。これも,初めは威勢が良いが,手持ちの蔵刀を売り尽くすと後が続かない。即ち,既存の刀屋から言えば数奇者,コレクターの内は客だが刀屋に変身した後はライバルになる訳で,寄って集って偽物を掴ませられ沈没する。鑑定刀の成績が良く,トーシロー乍ら刀の良く見えると云われる者が意外に多い。それは本人が天狗に成り過ぎた為だが,刀の世界にはこの天狗の鼻を折るのを趣味にしているご仁が多く中々面白い世界でもある。
例えばプロになると業者の市での仕入れが多くなり,ここは海千山千の強兵の集まりで,業者が自分でも判断に迷う名刀を出す,これを一分前後で判断して価格を書いて入れる,これがモ?大変,雑刀は素人が見ても判るし価格が価格だから兎も角として,迷・名刀は当たれば数倍だが,ハズレるとイタタ…で銭の他に「あいつは(刀が)見えない」と云う形容詞が付いて回る。三度も外れると金銭のダメージの他にウワサで潰される事になる。骨董の世界は刀剣に限らず,目明き千人,盲千人の世界ですので浮き沈みが激しいのです。
それと,ハタ屋という店舗を持たずに懇意な刀屋から何振りか借りて風呂敷に包んで,全国を売り歩く独特な商売が有りますが,不景気になるとこのハタ屋に頼る店が多くなり,挙句の果てにハタ屋が豚ズラして回収不能でバンザイする刀屋が多くなって来てます。
これらの事が老舗がなか〃〃続かない所以となっていると思われます。