東京木材問屋協同組合


文苑 随想


『歴史探訪』(42)

江戸川木材工業株式会社
常務取締役 清水 太郎

 野山は新緑に彩られ,行楽に絶好の季節と思っていたのも束の間,日本列島は鬱陶しい梅雨に突入しました。
 昨日は日帰りで福島県いわきまで出張して参りました。普段は地下鉄で通勤している所為でしょうか,常磐沿線の両側に展開する田植えが済んだばかりの風景が目に飛び込んで来て,2時間余の行程は退屈することなく,居寝りするのが勿体ないくらいでありました。
 今,横浜では開港150年を記念するイベントで賑わっております。150年前と云えば安政6年(1859),日本が太平の眠りから醒めようとしている頃,1868年,明治維新まであと10年足らずでありました。当時は人も住んでいない浜辺が150年後の今日,東京に次ぐ人口を擁する大都市に発展するきっかけになったのは全くの偶然で,日米通商和親条約が締結されたことに端を発します。
 東海道は,日本橋-品川-川崎-神奈川-程ヶ谷-戸塚と上って行きますが,貿易が始まり,諸外国の商人や役人が入国して来て,住む居留地が,今の中華街の辺りの海を埋立てて造成されました。住民との無駄なトラブルを避ける苦肉の策であったようです。
 当時の面影を残す山手地区に建てられた西洋館が復元され,横浜市指定文化財,横浜市認定歴史的建造物として公開され,訪れる人を楽しませて呉れます。外人墓地,港の見える丘公園等と合わせて散策し,中華街で食事或いは今ではランドマークタワー,赤煉瓦倉庫へと,訪れる度に新しいものに出会える楽しみで集客は毎年増えています。
 今横浜市富岡に住んでいる長男が,毎週末帰って来ては,名所を探して来て私共夫婦を案内して呉れます。3年程前までは,大山や丹沢の登山でありましたが,最近は体力が衰えましたので無理のない散策がほとんどになりました。先日は港北ニュータウンの緑道めぐりツアーに連れて行ってもらいました。
 入念に企画された事業によって,住宅団地と公園,水路等を組み合わせて継なぎ,自治体,住民,民間が一体となって推進する開発は,訪れる人に大きな感動をもたらし,又行き度い,住んでみたい,と思わせる施策はこれぞ,まちづくりの極意と云えるのではないでしょうか。道路,鉄道のネットワークも整備され,通勤,通学,行楽,ショッピングに対応し,横浜はまだこれから発展の余地を残しています。5月31日の日曜日も,新しい鉄道,横浜市営地下鉄の駅,仲町台の近くに駐車し,緑道を歩き始めました。古民家園があり,江戸時代の民家を移築し,池には紅白の蓮の花が咲き,水鳥が遊んでいます。水路には亀や鯉が泳ぎ,近所の子供達がザリガニや小魚を網で掬っています。今日はせきれいの道を行こうとして,木蔭の散策路を行きますと,ウッドデッキの上を本当にせきれいが飛び跳ねています。その先のかなりあ公園は未だかなりあは居りませんが,或いは育てて放つではないでしょうか。他にささぶねの道等テーマを決めて整備され,どこまで歩いても,自動車には出会わず,鉄道は地下に潜って騒音は消え,次はどんな情景が展開するか,心ときめく一日でありました。


 



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