東京木材問屋協同組合


文苑 随想

見たり,聞いたり,探ったり No.118


奈良・「平城京」と「春日大社」
遷都1300年,歴史の重み
青木行雄
明けましてお目出度うございます
平成22年の新年をお祝い申し上げます
※新木場第一堀の日の出

  「平城京」は今から1300年も前にそして13世紀も昔の事である。日本で初めて大規模な国際首都として栄え,平城宮跡は特別史跡として,古代都城文化を今に引き継ごうとして,復元工事が着々と進んでいる。そして今年大々的に大きな「イベント」が目白押し。

 京都から奈良へ近鉄特急で向う途中,大和西大寺を過ぎると広大な平城京跡を通過する。そして右に復元した「朱雀門」,左に建設中の「大極殿」の全望が目に飛び込んで来た。この大極殿,今年の大極殿完成記念式典に向けて,急ピッチの仕上げ工事に掛かっていた。
 平成21年9月23日前後の各紙に『第一次「大極殿」全貌現す』の見出しで記事が掲載された。
 私が奈良に行ったのは3日後の9月26日であり,近鉄特急の車中から写したのが下記の写真である。なぜか,平城京跡のどまん中を近鉄が走っている。

 その時の新聞各紙の記事を要約すると,  世界文化遺産で特別史跡の平城宮跡(奈良市)に文化庁が復元整備を進めている奈良時代の「第一次大極殿正殿」の覆い屋が取れてほぼ全容が姿を現した。
 大極殿とは天皇が出御し国家的儀式が行われた宮殿の中心的建物で,復元規模は幅44メートル,奥行き20メートル,高さ27メートルという。既に復元されている朱雀門の北,宮跡の奥にある巨大建造物の壮麗さが写真で良く分かる。ここで詳しく紹介するが,奈良は今年平城遷都1300年を迎える。1年間に亘って色々な事業が予定されているが,この復元大極殿は記念祭のシンボルとなる。

 
※現在完成し,誰でも自由に見る事が出来る「平城宮,朱雀
門」,色鮮やかでがっちりして,素晴らしい。
※この「朱雀門」の柱の間から遠望の建物が今建設中の「大極
殿」かなり遠い所に見える,広大な所であった。

 平城京は710年に女帝の元明天皇が飛鳥に近い藤原京から移した,時代区分でいう奈良時代の始まりだが,次の平安時代となる,794年の平安京(京都市)遷都まで奈良にずっと都があった訳ではない。東大寺大仏を造営した事で知られる聖武天皇は740年から745年迄,恭仁京(京都),難波京(大阪),紫香楽宮(滋賀)と都を次々と移し,再び平城に戻った。更に平安京が築かれる前の10年に亘っては長岡京(京都)が都だった。奈良時代はどこか不安定な時代だったのである。

 復元大極殿が「第一次」と呼ばれるのは,同じ時代の中での都の変遷と無関係ではないと言える。再び都が奈良に戻った後,朱雀門の真北にあった大極殿は東側に建て替えられたと言う。「第二次大極殿」と呼ばれ,建物の基壇が復元されている。更に宮殿は東側に張り出し部分を持ち東端には庭園があった事も判明し,東院庭園も整備されている。宮跡には,明治から大正時代にかけての壮絶な保存運動の歴史もあったのである。
 日々の紙面には制約があり端的な文だが,多少掘り下げて記して見る。

 まず時代背景を明確にする為,歴史年表を追って記して見る。奈良に関係ない出来事も入れてみた。

西暦 239年 邪馬台国の女王卑弥呼が中国,魏に使いを出す。
   430年 倭国王,宋に使いを出す。
   538年 大陸(朝鮮半島)から漢字や仏教が伝わる。
  飛鳥時代
   603年 推古天皇に聖徳太子と蘇我馬子は協力して,冠位十二階を定める。
   607年 法隆寺が建立。
   610年 隋に使いを派遣する。
   645年 都を難波長柄豊碕に移す。
   694年 飛鳥から藤原宮に都を移す。
  奈良時代
   710年 奈良の平城に遷都する。そして興福寺の造営を発願する。
   730年 薬師寺の東塔,興福寺の五重塔を建立。
   740年〜745年の間,恭仁京(京都),難波京(大阪),紫香楽宮(滋賀)
      と都を 次々に移した。そして745年に再び平城京に戻る。
   745年 中国(唐)から僧鑑真ら,8人が渡来する。
   759年 鑑真が唐招提寺を建立。
   766年 この頃,伊勢大神宮寺なる。
   785年 最澄,比叡山に草庵を造る。
    ※奈良時代は約85年間続いた。
  平安時代
   794年 都を平安京に移す(京都)
   816年 空海,高野山に道場(金剛峯寺)を開く。
   937年 富士山噴火す。
   999年 富士山噴火す。
  1024年 京都に大火おこる。
  1083年 富士山噴火す。
  1092年 京都に大火おこる。
  1098年 京都に大火おこる。
  1136年 春日若宮「おん祭り」始まる。
    ※平安時代は約400年間続いた。
  鎌倉時代
  1192年 源頼朝が鎌倉に幕府を開く。頼朝征夷大将軍となる。
  1274年 元,モンゴル帝国が攻めて来る。
  1281年 2回目のモンゴル襲来。
    ※鎌倉時代は約140年間続いた。
  南北朝時代
  1324年 正中の変おきる。
  1333年 鎌倉幕府が滅びる。
  室町時代
  1338年 足利尊氏が京都に幕府を開く。
  1456年 太田道灌,江戸城築城す。
  1467年 応仁の乱(1467〜1477)がおこる。
      この戦で京都が焼け野原となった。
  1543年 この頃より,南蛮人来航するようになる。
      ポルトガル人より,鉄砲渡来。
  1549年 キリスト教伝わる。
  安土桃山時代
  1573年 織田信長が室町幕府を滅ぼす。
  1575年 長篠の戦いで武田軍をたおす。
  1582年 信長,京都の本能寺で家臣の明智光秀に襲われる。
  1590年 豊臣秀吉が天下を統一する。
  1600年 関ヶ原の戦いがおこる。
  江戸時代
  1603年 徳川家康が江戸に幕府を開く(江戸幕府)。家康,征夷大将軍に
      任じられる。
  1607年 家康江戸5層6階の天守閣創建。
  1657年 江戸大火(明暦の大火)で江戸城焼失。
  1853年 ペリーが浦賀に来航する。
  1858年 日米修好通商条約むすぶ。
    ※江戸時代は約265年間続いた。
  明治時代
  1868年 江戸幕府が滅びる。明治維新,廃藩置県が行われ,県制となる。
      大日本帝国憲法が発布される。
     ※明治時代は約44年間続いた。
  大正時代
  1912年 明治天皇が死去,大正天皇即位。
  昭和時代
  1926年 大正天皇が死去,昭和天皇即位。
  1927年 銀行がいくつも休業,倒産する。金融恐慌がおこる。
  1931年〜33年 満州事変おこる。
  1941年〜45年 太平洋戦争おこる。
  1945年 原子爆弾が投下される。
  1945年 太平洋戦争が終わる。
  1946年 日本国憲法が公布される。
  平成時代
  1989年 昭和天皇が死去,平成天皇即位。
  1991年 湾岸戦争おこる。
  1993年 法隆寺が世界文化遺産に登録される。
  1998年 古都奈良の文化財が世界文化遺産に登録される。
  1999年 石原都知事 初当選する。
     「日の丸」を国旗,「君が代」を国家とする法,成立。
  2009年 鳩山民主党政権が生れた。
  2010年 奈良平城京遷都 1300年をむかえる。


※2001年度に着工したこの「大極殿」は,約10年かかってい
るが,東西約53m,南北約29m,高さ約29m,屋根には約9万
7000枚の瓦がひかれ,直径約70cmの朱色の柱44本の規模。
凄い建物だ。※報道により,多少誤差があるようだ。

 この古都の宮殿「大極殿」は,天皇の即位式や外国使節との面会,元日に天皇が威儀を正した群臣から祝賀を受ける「朝賀」の儀式といった,限られた典礼だけに使われた。最も格式の高い建物という。良くは分からないが今の東京宮殿の,新年参賀の時にベランダに立たれる「長和殿」が「正殿」と言う所かも知れない。
 平城京と春日大社について…
 春日大社は,平城京の守護の為に創建された御社で第一殿は茨城県の鹿島神宮から,第二殿は千葉県の香取神宮から,第三第四殿は大阪府枚岡神社から,夫々春日の地に迎えられた神々が祀られていると言うが,中でも武甕槌命は一足早く東の御蓋山の頂上に降臨され,やがて奈良時代の神護景雲2年(768年),藤原氏の血を引く女帝,称徳天皇の勅命により,左大臣藤原永手らが現在地に四所の神殿を創設したのが始りと言われている。以来,藤原氏の氏神として有名である。
※春日大社の正門入口,朱色が実に美しい。

 古くは,「春日大神社」,「春日神社」,中近世は専ら「春日社」と呼ばれてきたが,明治4年,「官幣大社春日神社」に列格,更に昭和20年,神社と国家の分離により,昭和21年,宗教法人法に基き「春日大社」と改称された。
 春日大社は平城京から車で10分足らずの近くの春日山の入り口にあるが,本殿に向かって右(東)から,第一殿,武甕槌命,第二殿,経津主命,第三殿,天児屋根命,第四殿,比売神の四柱が祀られている,武甕槌命と経津主命は水神であり,天児屋根命と比売神は,祭儀に関わる司祭者を神格化した神として,神格は,極めて対照的であると言う。また,武甕槌のシンボルは「杉の木」であり,芸能神の依代である「松の木」が天児屋根命の御子神を祀る若宮のシンボルであることから,樹神信仰が見られ,御蓋山の木を伐ることは堅くタブーとされた。平安朝に入ってからは,明らかに藤原氏の氏神信仰が中心となった。そして今,「藤裔会」と言う全国の会組織があって,藤原氏の末裔の人々によって会を運営し,春日大社の宮司を中心に現在の会長は平安神宮の宮司九條氏が務め,平成22年は6月に,春日大社の本殿で総会が盛大に行なわれる。

 この平城京遷都1300年祭には奈良を上げて盛大に色々なイベントが用意され,多くの人々が万博のように奈良に集まるのではないかと思う。
 この1300年前の平城京の事を色々調べている内に夢がロマンが脳裏に浮かんでくる。万葉集の中に,太宰府に派遣された「小野老朝臣」と言う人が平城京の様子をうたった有名な歌が書かれているが,「あおによし 奈良の都は 咲く花の にほふがごとく 今盛りなり」この平城京の都がいかに華やかな様子や情景が身震いする程良く伝わって来る。
  今年は何回奈良に行けるか楽しみだが,その都度記事にしたいと思っている。

 参考資料
  日本史年表 岩波書店
  奈良の世界遺産
  平城宮跡保存の歴史
  春日大社史
  日本の歴史 石黒拡親(中経出版)

平成21年12月13日記

 

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