東京木材問屋協同組合


文苑 随想


日本の文化 「日本刀」…Japanese Sword…

「♪一家に一本 日本刀 スカッーと爽やか日本刀♪」

其の82
鑑定会(当てっこ)

愛三木材(株)・名 倉 敬 世

 アッイアッイの酷暑の夏も彼岸を過ぎると日暮れと共に終息、商も秋の陣に突入を致しましたが、少生は元来物持ちが良い為か、夏に引込んだ風魔が未だに居座っており、為にエンジンがなかなか掛らずに日がな一日ボォ〜と致していて、正に「忙中閑有」で閉口しております、通年のローテーションから申せば、今年も木場公園で皆様に大変にお世話なりました、都木連主催の「木と暮らしのふれあい展」〜本年はナント、今迄で一番多い五万人の入場者〜が目出度く終ると、日本全国は「芸術と食欲の秋」となり、各地で地域ブランドのフェスティバルが花盛りにて、大輪の花を咲かせております。
 特に今年は百済の救援に日本軍が出兵して白村江で大敗した後、アッチャコッチャ移動して定着が出来なかった皇居(都)が漸く平城宮(奈良)に落ち着いて1300年の記念すべき年でしたので、「青丹よし〜」の都はさぞや「盛り〜」だったでしょう。

御物 太刀 無銘(小烏丸)

無 銘 号・小烏丸(伝・天国)長62.7cm(二尺七分)反り1.3cm(四分三厘) 御物。
 古来より天国作との伝承ながら今ではこの説は?である、正倉院の両刃造の直刀とは異って直刀から湾刀への移行期の平安中期の作とされており、その差は240年程ご猿。平貞盛が純友の乱の平定の功績で賜り平家の重宝と成るが、後に明治天皇に献上される。 

 所で、日本刀のスタートはこの平城遷都(和銅三年・710)の約10年前の大宝元年頃(701)、始祖と言われる天国・天座が史書に登場して参ります。勿論、この時代より前は我国でも物部vs蘇我の神仏を賭けた両派の熾烈な戦い、天下を争った「壬申乱」等様々な騒乱がありましたので、その為の武器は当然ありました。併し、それらの武器は現在でも正倉院に多く残っておりますが、全て直刀ですので。残念乍ら日本製では無く、Mede in Caina &Korea 製との認定であります。有名な熱田神宮のご神宝である日本武尊の草薙の剣も明治初頭に開陳されたときには青銅製ではと云われております。
…有名な越王(465)勾践の剣は昭和40年(1965)湖北省江陵県の望山の墳墓から出土。青白く輝いた鋭利な青銅の55.5cm(一尺八寸三分)の剣。「越王鳩浅自作用剣」と在銘…。

 そこで、刀剣愛好家は「秋の芸術祭参加」のイベントとして何をするかと申しますと、アテッコ、当てっこ、を致す訳でして、これを世間様では「鑑定会」と申しております。秋の夜長の一興として、この刀剣の鑑定会の有り様を簡単に申し上げてみましょう。
 識者(先生)が判者(合否の判定をする人)となり、秘密の場所の裸電球(白熱灯)の下にて五本の刀剣(太刀・刀・脇差・短刀)を凝視して、その作者(刀匠)を当てるゲームでご猿。
 心得としては、自己の刀剣に対する知識の錬度を試す場が「鑑定会」との認識でOK。

 刀剣の公的に認定された団体は、(財)日本美術刀剣保存協会(日刀保)が唯一の機関で、会長は熊本藩主の曾孫の細川護立氏や鹿児島選出で税調のドンが長かった山中貞則氏、この山中氏と次の橋本竜太郎元総理の二人が逝去されてから、協会挙げてのドタバタが勃発、長期に亘り収まらず、現在は元東京高検検事長の村山弘義氏が相撲協会から移行されて理事長に就任となり漸く新体制が斬れたばかりでございます。
 その協会の下部組織が各県にございますので鑑定会は各支部でも開催をしています。因って、これから「スカーと爽やかで、ついでに歴史が良く判る日本刀」のサークルはお値打ちだと思います。近頃はレディの会員も増えて来てますので是非ご入会ください。鑑定会の参加費は会により多少は違いますが、お茶付きで大体一回2000円位でしょう。本部の会員は年会費が12000円ですが「刀剣美術」という有益な冊子が送られて来ます。

 其の冊子の中にも別紙の如く「誌上鑑定」というスペースがありまして、その回答が一年間(12回)正解だと氏名が「刀剣美術」で紹介されホンの心ばかりの粗品が送られて参ります。例えば、平成22年七月号の問題は次の様な設問でご猿る。

 第642号誌上鑑定刀

 入札締め切りは十月五日までに、六日の消印は無効と致します。
 一人一通、住所 氏名 を明記し氏名にはフリガナを付けてください
 尚、同一の刀工が他派にもいる場合は、流派か国を、又、代の有る場合は代別を必ず明記して下さい。

…この作者は誰でしょう

刀 刃長 二尺四寸三分半(73.78cm)反り5分(1.52cm)元幅1寸四厘(3.15cm)
   先幅 七分三厘(2.2cm)元重ね二分八厘(0.85cm)峰長さ1寸一分二厘(3.4cm)
   茎長さ 七寸一分半(21.66cm)茎反り極く僅か。

 鎬造、庵棟、身幅尋常、元先の幅開き、反は極く浅い、中峰心持ち詰まる。地鉄は小板目よく詰み、所々に大肌を交え、地沸よく付き、地景細かに入り、鎬地目立つて柾がかり、かね冴える、刃文・帽子・図の如く、足総体に太く入り匂い深く、沸厚く付、明るく冴え、金筋・砂流し細かく掛る。茎生ぶ、先栗尻、鑢目勝手下がり、目釘孔1、指表の最初の一字を目釘孔にかけ、以下棟寄りに鎬筋を中心として長銘がある。

 小生は一応30年程連続で正解をしていますので、本数にすると360本は当たった計算になりますが、実際の「鑑定会」ですと中々厳しいものが有り、未だ〃〃でご猿。
 どんなゲームでも易しいのは早く飽きます。ナンボか難しい方が後味は宜しい様で…。その点、刀剣は限り無く奥が深くて飽きが来ません、銭金も目が慣れて来ると意外に、掛けずとも楽しめる様になって来ます。…そのコツは追い追い伝授致しますバイ…バイ。

 


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