東京木材問屋協同組合


文苑 随想

東海地震・東南海地震・南海地震

榎戸 勇


 この3つの地震は必ず起きる。30年以内に起きる確率は東海が87%(マグニチュード8.0程度)、東南海は70%程度(マグニチュード8.1程度)、南海は60%前後(マグニチュード8.4程度)と発表されている。しかし3つの地震が連動して同時に発生するとマグニチュード8.7程度になるという。
 発生確率を30年以内としているが、仮に3年後に発生しても、3年後は30年以内なので間違いにはならない。権威ある発表はこのように常に逃げ道を作るものらしい。
 しかしある学者は、今回の大地震に誘発されて、東海地震が単独で比較的早く発生する可能性があると述べている。ことによると数年内かも知れない。
 今回発生した地震は1億年以上昔にできた比重の重い太平洋プレートが陸の北米プレートの下に潜り込んだものだが、比重が重いため深い角度で潜むので摩擦が少ないため、地震が起きても大地震にはならないと学者の方々も思っていた。記録に残っているのは昭和13年(1938)の福島、茨城沖地震(マグニチュード7.5)だけで、この地震は平均37年位の間隔で起きている地震だという。(マグニチュードは7前後)

 しかし、東海・東南海・南海の地震は生成が数千万年前位の新しいフィリピン海プレートが陸のプレートの下に潜り込むので、100乃至150年ごとに地震を発生させているとのことである。
 最近では昭和21年(1946)に発生した南海地震が知られている。敗戦の翌年なので大都市は焼け野原の時で、その復興に都会の住民は食糧難の中で必死になっていたので、私共はほとんど知らなかった。当時、新聞はタブロイド型(木材新聞の大きさで1枚2頁、時折4頁)ラジオは「真相はこうだ」という米国が正しいというようなことばかり流しており、この地震のことはNHKニュースで簡単に放送した程度で、被害内容はほとんど述べなかったように思う。
 ところがつい最近(5月1日)の『読売新聞』に地震で高知市街は地盤が沈下し、市街のほとんどが水浸しになっている写真が掲載されていた。本当に街全体が水浸しである。そして、現在その水浸しになった地域が再び市街地になっている写真も添えてある。恐らく大きな南海地震が発生すれば再び水浸しになるのではなかろうか。高知市、高知県はどのような対策を考えているのか心配である。但し南海地震は当分起きないと思う。
  さて、東海・東南海・南海の地震が連動して同時に起きると長さ700km、幅200kmの大地震である。これ等の地震は100乃至150年周期でそれぞれ個別に発生しているが300乃至500年周期で3つの地震が重なり連動しているらしい。運動発生は887年、1361年、1707年に発生している。連動発生から300年になるが南海地震がすでに単独発生しているので、連動発生は当分ないと思う。東南海地震も昭和19年(1944)に起きており、東海だけ残っているので近い将来必ず起きる。静岡県知事は、点検中で止めてある県内に有る原発の再稼働を差し止める旨発表している。
 何よりも県民の生命と財産を守るのが知事の役目だとし、県民の大きな支持を受けている。電力会社はそれを押し切って稼働することは不可能であろう。中部電力は煮え切らない発表をしているが万一を考えて稼働を止め安全を図って欲しい。
  中国地方は原発のほとんどが日本海側にある。3連動地震が起きれば地震の揺れは有るのでその対策をしっかり検討し対処すれば大丈夫だと思う。何はともあれ私共は節電をしなければいけない。私の自宅は60Wの丸型の蛍光灯の中に30Wの丸型が入っていたが30Wの方のコンセントを外し60Wだけにしている。また2階の部屋は20Wの蛍光灯が4本並んでついていたが2本のコンセントを外し、2本にした。このようにして自宅全体として25%以上の節電を現在しているがさして不自由ではない。

 さて、東海地震で浦安が再び液状化の被害を受けたら浦安の埋立地に住む人々はどうもにならない。浦安の埋立は昭和40年代から昭和50年代にかけて埋立をしたものでまだ十分固まっていないのではなかろうか。そして埋立の底地はヘドロである。私は埋立前に見ているのでよく知っている。そのヘドロを取り除かずに埋立たのであろう。埋立は国の許可を得て千葉県企業庁が行ったものである。私共は企業庁から購入した。埋立方法に問題が有ったのではなかろうか。道路、公園等は浦安市所有である。国、県、市は協力して地盤改良を一日も早くして貰いたい。公有地の地盤が改良されれば私有地はその所有者がすることになろうが、国や県は地盤改良の助成金を出して頂きたい。そうしなければ私有地の地盤改良は進まないと思う。埋立地を払下げたのは千葉県なので払下げを受けた市民を助けて貰いたいのである。そして地盤改良は何時発生するかわからない東海地震発生に間に合うよう一日も早くせねばならない。国は三陸、宮城、福島の被災者救援で大変であるが、次に起こる地震の被害を少なくするための助成は損害を小さくし、その復旧費用が少なくなる。何時か必ず起きる東海・東南海・南海の3地震への対策を早急にして頂きたいのである。

(付記)
 地盤改良助成金は個人住宅所有者対象でよい。地盤が不等沈下し住宅が傾き建物の大幅修理を要するのに、ローンがかなり残っている方も多いらしい。このような人々がローン残高を申告して審査のうえ助成すれば不公平にならないと思う。
 私共の土地建物は社有なので自力で直すことになろう。今期の経常利益と減価償却費で大半は補えるかと考えている。対策費が不足する法人は取引金融機関に相談し成る可く、低利で借入をして欲しい。金融機関の前向きな姿勢を期待する次第である。

 災害復興資金は個人所得税にその10%の震災復興資金特別税を、一定の年限(5年位か)課税するのが良いと考える。消費税アップでは収入が多くてもお金を使わない人は納税額が少ない。そして生活保護世帯も生活に絶対必要なものは買わざるを得ないので、お気の毒である。所得が多い人は所得税の10%の特別税を納税しても生活に困るわけではなく、消費支出を大幅に減らすこともなかろう。尚、この特別税は所得税の10%で、個人住民税等の地方税は関係ないので、税引の個人所得がまるまる10%減るわけではない。当店の給与計算書を見たところ源泉所得税より住民税の方が多い人が大部分なので、手取額の減は5%以下である。
 尚、この特別税は法人税には付課しない。法人は国際競争がある。内需専門の中小企業でも常に安い輸入品と競争している。法人の力を削いではいけない。個人商店をどうするのか、との問いもあろうが、街のお店のほとんどは有限会社になっている。私の行く理髪店は親子3人でやっているが有限会社だ。個人商店は私の知る限り年寄りが駄菓子等を暇つぶしにやっている店が一軒あるだけなので、恐らく所得税はかかっていない規模と思う。
 赤字国債を増発して息子や孫達の世代を苦しめることは罪悪と思う。昔大学で学んだ財政学を思い出しながらこの付記を書いた次第である。

(もう一つ付記)
 先月号に常用対数の計算式を使って、マグニチュード9は8の約31.623倍と書いたが、常用対数は70年前、旧制商業学校4年生の時学んだだけなので、この計算でよいかどうか少し不安だったが、新聞の記事に「9は8の約32倍だから…」となっていたので、私の計算で良いことを知り安心したので付け加えさせて頂きます。
 

平成23年5月8日 記

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