前月号に書かせて頂いたとおり、当社は浦安市入船の賃貸建物に被害があった。先日社長と共に現場を見てきたが、まだ新浦安駅から南へ伸びる大通りは道が凸凹で車がガタガタ揺れた。大通りの歩道が波打って沈下しているので建物の出入口はそれに引きずられて壊れてしまった。出入口が大通りに面して2ヶ所あるが2つ共造り直すことになると思う。大通りから直角に6m道路がある。この道路はかなり沈下しており、木造(2×4)2階建ての賃貸ワンルーム14室の住宅は道路の方へ道路沈下に引きずられて傾いてしまった。住人は退去した人も、まだ我慢して住んでいる人も居る。建物は厚さ16糎のコンクリートのベタ基礎(縦横30糎ごとに鉄筋を入れ交点をしっかり結んである)の上に建てたので、建物自身は折れたり曲がったりはしていないようだが、一度専門家に検査して貰う予定である。
さて、この修理費用であるが、検査費を含め全額を修繕費として損金経理してよい旨通達が出ている。やむを得ず決算期迄に修理できない場合は工務店の見積書を添付して税務署長宛に申請書を提出すれば未払費用として当期の損金にしてよい旨の通達も出た。
この修繕費(未払費用を含む)、を損益計算書のどこに記載すべきかを考えた。
修繕費には日常的に発生する費用、例えば車の修理、パンクの修理、器具備品の修理等がすでに伝票と元帳に記載されている。当然これらの修繕費は一般管理販売費に含まれる。
しかし大地震液状化による被害の修理は日常的に発生するものではない。色々考えた末「修繕費(2)」として日常的修繕とは別の勘定科目を作成して処理することにした。
損益計算書は次の順序で記載される。
売上高−売上原価=売上総損益
売上総損益−一般管理販売費=営業損益
営業損益+営業外収入−営業外費用=経常損益
経常損益+特別利益−特別損失=税引前損益
そして税引前損益から法人税、法人住民税、事業税を差引いて当期純損益
日常的に発生する修繕費は当然一般管理費であるが、今回のような滅多にない大地震による被害の修繕費は「特別損失」なので一般管理販売費ではなく特別損失として経理することにしたのである。
前述のとおり一般管理販売費を差引いた金額が経常損益である。経常損益は当期の経営活動の結果を示す金額で経営計画を立てるうえで重要な数字である。銀行等はこの数字を重視しているらしい。そこへ突発的な損益の金額が入り込んではいけないと考えて、大地震による液状化被害の修繕費は特別損失にした。税務上は税引前損益により課税するので修繕費を一般管理販売費にしても特別損失として処理しても同じことであるが、経営内容を示すうえでは別立てにする必要があると思ったのである。
尚、特別利益には第一生命保険が株式会社に変更したため、少額ではあるが株式の割当があった。私共は上場会社の株式は会社では持たないことにしているので、株式代金を現金(銀行振込)で受取った。これは全く予想外の収入、しかも一回こっきりの収入なので「雑収入」勘定ではなく「雑益勘定」として特別収入に計上した。この区別、日常業務の成績を示すうえで、損益計算書に別々に記載することをお薦めする次第である。
前月号に当社の地盤沈下による損害は税引前利益と減価償却費で大半は補えると考えている旨書いた。つまり税引前利益がほとんど無くても、もし若干でも有ればそれと減価償却費で何とかなると考えて書いた次第である。減価償却費は当然一般管理販売費なので損金経理をしてある。従ってすでに損金として処理済みなのに、何故ここで減価償却費が顔を出したのかは、大方の方々には分かりきった事だと思うが、念のため付け加えると、減価償却費は損金として経理するが、お金が出ていくわけではない。従ってキャッシュフロー会計のうえでは、減価償却費から当期購入予定の償却資産を差引いた金額はお金として残るので、資金繰り計算上は被害復旧用に使えるためである。当期は車、その他買い替えが不必要と思うので、減価償却費の7割位は災害復旧費用として支出できると思う。しかし復旧費用の金額は建物に付随する駐車場、駐輪場の舗装費用分だけで、建物本体(出入口を含む)は道路が完全に修復しないと工事ができないため現在は見積りができないので、どの位かかるのかわからない。工事が可能になり次第早急に行いたいと思っている。もし、復旧費が考えているより多額だと経常利益と減価償却費では賄えないかも知れないが、三陸地方や宮城県、そして原発事故で避難している方々の苦労に比べれば軽い被害である。当店の経営、資金繰りは万全、銀行預金も十分有るので、一日も早く被害を復旧して前へ進みたいと思っている。
木材業界でも仙台、鹿島、その他で被害にあった方がいらっしゃると聞いているが、一日も早い修復を皆目指して工事をしているようで、私共も元気付けられている。
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