東京木材問屋協同組合


文苑 随想


日本の文化 「日本刀」…Japanese Sword…

「♪一家に一本 日本刀 スカッーと爽やか日本刀♪」

其の85 珍名・アラカルト

愛三木材(株)・名 倉 敬 世

 刀工の名前(銘)には珍名が多々ございまして、現在小生の手許に来ております太刀の中にも「八月一日」と穿ってある刀工名がありますが、これは何と読むと思われますか?。
陰暦の一日は「朔・サク」とか「朔日・サクジツ」とか申しますが、これは朔の字の偏は逆の元の字で、月が一周して元に戻った事を意味したもので、そのために「八月朔(日)」又は略して「八朔」と書く事も有ります。但し陰暦なので時期的にズレる場合が有ります。

 所でこの「八月一日」を名字としては何と読むかと言えば「ホズミ」と読むのですが、8月1日を「田実(タノム)の節句」と言い、稲の初穂を積み上げて神に捧げて祝う日にされていたからで、これを取り仕切る人が「ホズミ」氏で珍名の発祥となった訳です。
 他に月日の入った苗字では「四月一日」や「十二月一日」などが有りますが、前者は「ワタヌキ(衣替え)」さんで後者は「シワス」さんです、この中では「八月一日」さんが最も古く、格式も高い家柄で後に穂積と漢字を当てる様に成りましたが、「ホ」だけでも「イナホ(稲のホ)」「ホノホ(火のホ、炎)」の様に先端を指す古くからの日本語でご猿。
 
 「八月一日」さんと似た仕事から始まった名前が「鈴木」さんで、此方の発祥は紀州で矢張り初穂を積み上げて、中心に「聖なる木・スズキ」を立てて稲の神(雷)を呼び稲に神の宝を取り込んで豊作を祈願する。因みに「稲光 イナピカリ」「稲妻 イナヅマ」や「稲魂 イナダマ」と云う言葉もこの事から出ている。こうした行事を取り仕切る人を「鈴木」さんと当て字にして呼ぶ様になったが、元来「スズ」は「ススぐ」とか「禊」や「清らかさ」に関係した古い日本語である。鈴木さんは農事万端の指導から生活相談迄、地域に根を張りながら全国各地に進出し現在、全国苗字ベスト(5)中の二番目でご猿。

 良く世間では「氏より育ち」と申しますが、氏とは同じ血縁関係の集団を表す言葉で、それが大きく成ると下部組織に色々な役職や地位の呼び名を付け、区別する様になる。  
 元来、日本では朝廷が「姓(カバネ)」制度を作った訳ですが、本来は中国で「姓」は「女系家族」を意味しており、こちらの方が「血縁関係」を示したのでご猿。 
 その内、「氏や姓」等の封建制度は崩壊して職名や地名等から好きな名字を名乗るが、一般の庶民では「名字帯刀」を許された者だけあったが、明治初年(1868)に戸籍法が出来、名字も一緒に届けねばならなくなって、全国民に「氏名」が付いたのでご猿。
 尚、戦後になって戸籍に「華族」「士族」「平民」等の記載は撤回となりました。

(5) (4) (3) (2) (1)
折紙の解説。
(1) 吉次の折紙 包紙の表書。
(2) 山城国吉次 山城とは京都(ミヤコ)の事ですが、この工は京都と岐阜の間で作刀する。
(3) 正真=偽物では無いと言う事。生ぶ・在銘、中心の目貫孔一つ。
(4) 価格  金子七枚(大判)小判で28枚(一両・30万=840万・幕末の為、現在に直せず)
(5) 日付 安政五年 六月三日 毎月三日に本阿弥家に分家が集り全員の賛成で決める。
花押  十九代・本阿弥忠明。幕末最後の当主で之から以後はバラける事となる。
京透し鐔
梅枝に笠の図 江戸中期
  

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