東京木材問屋協同組合


文苑 随想

材木屋とエコ 環境 省エネ(第5回)

節電で見つけた足元クールビズ

(株)コバリン 奥澤 康文


私の節電報告】 大震災で福島第一原発事故が発生以来、首都圏を中心に電力不足に見舞われ、日本全体が節電ムードになってきた。供給電力量自体が減少した分、夏場の消費電力のピークカット(午前9時?午後8時)をしなければ、大停電となりすべての社会的な機能が麻痺し大混乱となる。当社でも社内回覧等で節電協力を呼び掛けている。
  6月24日(金)は猛暑で、埼玉県熊谷市で39.8℃を観測し、6月の最高気温となり、使用電力は92%に達した。余力は8%しかない。95%位が続いた場合には警告がでるようだが、3月頃の様な計画停電もあり得る状況となっている。そこで、少しでも自分にできるものはないかと考えた挙句、一つのユニークなものに出会ったので、以下に報告します。

 尚、当社は、創業者の故小林準一郎翁(戦前の王子製紙兜寰ミ長)の経営理念である「木に学び 木を生かす」をモットーにしてきました。今流に翻訳すると、「環境に優しい経営」を目指しています。図中の「もみがらエコボード」は、職人の手創りであり、採算性よりむしろ、社会貢献の一環(農村や近隣が農業廃棄物処理に困っている為)として取り組んでいます。現千葉社長も自然エネルギーの有効利用には関心を持っている。日本全体でもそうだが、特に秋田では自然素材を生かすブームが来ている。秋田営業所内には、「天然木展示場」がありますが、申込選考後、地元の自然素材愛好家の趣味の為に、ほぼ無償(電気・水道代程度)での貸出をしています。

世の中での節電の取り組み】 テレビを見ても、連日この話題で持ち切りとなっている。どうやって節電するか?企業等ではこの状況を逆手に取り、この際思い切って働き方自体を変えたらいいのではないか等、ユニークな取り組みが始まっている。
サマータイム制:出勤時間を早め、その分帰宅を早める方法だ。本格的には7月からだ。
振替休日型:土曜日、日曜日を稼働させて、平日の木金等を休みにする。(自動車メーカー等)
在宅勤務型:バッテリーを会社で深夜に充電し、在宅勤務のPCに利用する。

  私は20年以上前に米国で数年間生活体験したが、サマータイムの顕著な節電効果を疑問視する一人であり、1時間程度の早出では効果は少ないのではないかと思う。振替休日型は、効果があると思う。いずれにせよ、多様な取り組みの中から、独創的な改善が生まれることを期待する。

昭和30年代の生活に学ぶ】 昔は普段に使用していたもので、若い人には馴染みがないと思いますが、太陽光を遮断し日差しを和らげる「すだれ」や「よしず」を窓際に掛ける。これで10?20%の温度調整ができるという。週末に近隣の住宅街を散歩した時、旧家の玄関前に立て掛けてあり、使い込んだと思われる「よしず」があった。よくぞ、「あっ晴れ!」をあげたい。そして、植物の「ゴーヤ」でも、日除けになるので涼しくなる。ゴーヤの育て方教室なる番組がネットで紹介されている。時として「扇子」を使うこともある。「風鈴」も好きだが、私のマンションでは禁止されている。
 では私に一体何ができるだろうと、頭をひねって考えてみたわけです。生前の祖母が日常的に、「よしず」、「すだれ」、「ござ」等を使っていたのは、遥か40?50年前のことで、エアコンの存在自体全く知らなかった。家の中に、家電が大量に入ってきたのは昭和30年代だ。冷蔵庫、洗濯機、扇風機、テレビ、水道、電話等だ。当時、私や母は大喜びだったが、明治20年生まれの祖母は、生活信条として、特に、洗濯機は最後まで使わずに、真冬でもタライに水を汲んで、洗濯板でゴシゴシとやっていたのを記憶している。だから、「すだれ」や「よしず」を使って、エアコンを控えめにする試みは、古き良き日本の風情を感じさせる深い趣があり面白い。

自然素材で、足元すっきり効果】 試行錯誤の後、ひょうたんから駒のような話だが、稲の籾殻を有効利用した自然素材である「もみがらエコボード」に、足元をすっきり、さっぱりする機能があることを突き止めた。会社及び自宅の自分の足元で何度も試した。3?4月では、際立った感触は無かった。しかし、5月、6月迄、しつこく実験(?)していたら、或る蒸し暑い午後、突然、「さっぱり」「すっきり」「さらさら」感を体験した。足元に悩みや不快感を持つ方は、一度トライして下さい。
最初は、激しい抵抗にあう】 最初は抵抗をしていた家族も、夏場であれば面白いかもしれないと言ってくれた。6月末の時点で、エアコンや扇風機さえ使用禁止の会社や職場もあるようだ。当社では、そこまでは強要していない。他愛のない思い付きかもしれないが、意外にいい発案かもしれない。原発事故で福島県内の体育館等に避難している人達は、放射能不安の為に窓を閉め切り、エアコンなしの生活を強いられている。それに比べ、我々の我慢はまだ序の口だ。
 SEや事務職等の長時間座業労働者の中では、自分の机で効率を落とさない為に、裸足で仕事をしている人も増えているようだ。エアコンが使えないと長時間靴を履くことは、じんわりと苦痛になってくる。1年前であれば、私の発想は全く相手にされないものだろう。しかし、この電力不足は停止中の原発を稼働させれば解消されるはずだが、脱原発の威勢がついた世論が許すとは思えず、当面は続きそうな状態である。

暑い夏と靴の汗蒸れ】 昨年迄は、夏場の長時間履いている靴が悩みの種だった。残業の少ない時は平気なのだが、残業が続くと辛いものがあった。早朝に家を出て、遅く帰宅する毎日は、15?16時間も靴を履いていることになる。今年は電車が弱冷房車となり、特に帰りの電車では汗ばんでくる。しかし、今年は足元に「もみがらエコボード」を使っているせいか、職場では汗のぐっしょり感が幸い出ていない。原始的な方法だが、「昭和30年代の生活感覚」を懐かしく思い出しながらのゆったりとした気分もいいものだ。身近にあるもので、涼しさを呼び込もう。帰宅後には汗でぐっしょりした靴を、下駄箱の「もみがらエコボード」に乗せ、中に新聞紙を入れ乾燥させる。建築資材である他に、こんな使い方があるとは誰も知らなかったことだ。私と数人の実験協力者は暑い夏から少し解放された。裸足で働いているSEからは、試して良かったとの電話があった。

深川・新木場中金会】 少し話題は変わるが、6月14日(火)商工中金様主催の平成23年度通常総会と講演会(第一ホテル両国)に出席した。昨年の講演者は伊藤元重氏だった。今年は月尾嘉男氏(東京大学名誉教授)による、「これからの10年・キーワードは多様」であった。大勢の聴衆を前にして、日本や世界の現状とこれからについて話をされた。講演者はテレビや新聞等で拝見する著名な先生であり、今年も期待をしていた。過去20年の不況と3月11日の大震災で、語る側も、そして、聞く側も共に辛いものがあった。今回の月尾先生の講演も各種の資料や統計等を駆使して、明快に説明して戴きよくわかった。

二流国家となった日本】 先生は冒頭から、「現状の日本経済は、皆さんが考えている以上に、よくない・・・」と発言された。日本経済はこのまま低迷すると、更に深刻な事態となることがよくわかった。昨年の講演会でも、日本が現状で推移した場合には、10年後には、日本の会社は今の半分となるだろう、ということを聞いた記憶がある。その時もショックだったが、今年は大震災と原発事故が起きてしまい、益々、悪化へと向かっている。先生の明快な分析と卓越した見識に接し、大変に勉強になった。
 月尾先生からは、既に数年前より世界的に見た日本の総合力が二流となっていることが様々な指標で説明された。国の借金が約900兆円もあることだけでなく、様々な分野での国際競争力の顕著な減退や、国内産業の空洞化等が鮮明となってきた。ところで、韓国が90年代に財政破綻した時、IMFが入ってきた。日本もこのままズルズルと行ったら、何時そうなってもおかしくはない。しかし、韓国はその経済危機を克服し、日本と比べ元気がある。既に日本は多くの分野で劣勢となった。「多様化」の中で、先ずは自分、自社等の強みや良さを見直して伸ばすことが、日本を救う事に通じると感じた。

日本の再生や復興への提言】 新聞や雑誌にも相次いでいる。6月26日付 『朝日新聞』に、「日本の創造的再生へ」という社説が出ていた。「日本は力強く復活する」と言ってくれる外国の要人は多いが、一方では、「日本は終わった」とか、「日本の輝きは戻るのか」と疑問を持つ声も多いのも事実だ。歴史的悲劇を日本の創造的再生に転じる。それこそが犠牲者を追悼し、世界の人から寄せられた友情や期待に応える道だ、と結んでいた。又、スパコンの計算速度が、7年ぶりに世界一に帰り咲いたというニュースがあった。お金もかかるが、日本の科学技術力を世界に知らしめる一端である。停滞した景気や政治的な混乱の中で、明るい話題だ。そして、「小笠原諸島」、「平泉」が共に世界遺産に正式に登録された。これも又嬉しい話題だ。「猊鼻渓の谷間の百合」も喜んでいるに相違ない。

パナソニックのエコナビ】 最近、テレビでよく見かけるCMで、あの綺麗な女優である「吉瀬美智子さん」が宣伝している。そのエコナビが、当社の「もみがらエコボード」を取材し、3月21日から1週間、都内の電車内の液晶画面で紹介してくれた。当時は、3月11日大震災の直後の混乱と重なり、社内でも見た人がいなかった。そして、再び、7月25日から電車内(1週間)とWeb(6ヶ月間)とで放映をしてくれることになった。暑い満員電車の中で見る人は少ないかもしれないが、少しの人でもエコ商品に興味をもってもらえば有難い。エコナビのトップメーカーであるパナソニックにやって頂けるとは、身に余る光栄なことだ。エコナビは、長期低迷する日本経済の中で、新時代の積極的な商品開拓や紹介をしている。国内産業の空洞化が加速する中で、残された我々は創意工夫による踏ん張りが必要だ。負けませんよ、材木屋でも。必ず、活路がある。

尚、能代商工会議所では、「もみがらエコボード」を創造性や地域おこしのアイデア商品として、初の「のしろブランド」に認証した。理由は、籾殻を有効利用した断熱材で、調湿性、断熱、吸音、遮音等の効果がある。更に、地元で処理に困っている籾(※)殻の野焼きを防止することで、二酸化炭素削減にもなり、地球環境に優しい商品であることが認証理由である。

※都会の人では想像できない程深刻で、山火事、喧嘩、呼吸困難等の元にもなる。(2011. 06. 30:秋田『北羽新報』)


最後に】 大震災後は暗くて悲しい話題が多かった。「AKB48総選挙」の話題は新時代らしく、熱気を帯びていた。日曜夜9時のホームコメディ「マルモのおきて」は、ほのぼのとして楽しかった。7月3日最終回だったが、復活して欲しい。震災から、4ヶ月を迎えようとしている。社会が少しでも明るさを取り戻すのは良いことだ。今日は7月7日。各地の七夕祭りも心なしか悲しげに見える。これから各地で夏祭りが始まる。大変な苦難の中にある人も大勢いると思います。私は農林業関係の友人知人が多いので、仲間内での生きたネットワークを作って行きたい。日本を少しずつでも復興させて行こう!!
 7月6日付『日経』に、伊藤忠商事(株)が米国で、木くずや間伐材を燃料とする「木質バイオマス発電」事業に参入する記事が出ていた。この種の発電所では米国最大となり、小型の石炭発電所並み(出力10万kw)の計画で、2013年稼働を目指すという。又、東日本大震災で発生した大量の「がれき」を、企業が再利用する動きが広がっている。選別や洗浄等難事業だが頑張ってもらいたい。若い頃、リサイクル関係の仕事を経験したことがあり、懐かしさと情熱が蘇る。安定的な「植物等自然素材」の有効利用は、積極的に推進すべきと思う。又、当社の「もみがらで断熱材ボード開発」をエコ商品、健康商品として期待する記事が出ていた。(『日刊木材新聞』:2011年7月8日付)上述した「小笠原」を始め、貴重な自然は愈々大切にしなければならなくなった。自然環境に優しい仕事をすることは、材木屋としての誇りである。

  上記の足元「すっきり、さっぱり感」を体験したいと思われる方は、先着30名様に試供品(無料)を差し上げます。応募者が多数の場合には、抽選とさせて頂きます。
■お問い合わせは、電話:03-3642-5246、FAX:03-3630-6900 潟Rバリン奥澤迄■


2011年7月7日(木) 記

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