東京木材問屋協同組合


文苑 随想

あなたは、牡蠣系、ホタテ系 どちらですか?

株式会社阿部清商店
代表取締役 阿部正彦


 6月初旬に参加した文化厚生委員会青年部「現地ボランティア活動」の活動地、気仙沼の“唐桑創生村”より、今回参加した組合員及び従業員16名を含む、参加者全員の集合写真が届きました。撮影時、小雨が降り出したので雨具を付けていますが、皆さんの顔は笑っています。活動期間は1日でしたが、地元の方々に作業を習いながらもお手伝い出来た達成感、連帯感、安心感など、夫々の思いが写真から伝わって来ます。お世話になった“創生村”の村長さんをはじめ、漁師さんとそのご家族の方々もとっても良い顔をしています。

 私は学生の時に所属していた「日本ウオーキング協会」主催の「歩く市民外交」に団員の一人として参加した事があります。その最終日のレセプションパーティーの席で、団長とハワイの一般のご婦人との会話の中で、「貴方のご職業は何ですか」という質問があり、団長は「会計事務所の代表です」と答えると、更に「他には何をしていますか」と質問され、「他にはありません」と答えました。するとご婦人は「会計事務所の仕事は生計を立てる手段として従事する事柄であり、自ら活動して思いやりを持ち、他人の力になる仕事をしていないのであれば、是非、帰国後に見つけて欲しい」と話されました。団長は早速、茨城県水戸市でウオーキング協会を奥様と立ち上げ、現在も日曜日に活動しています。ボランティア活動はアメリカでは生活の一部となっており、特別な事ではない事を知った私は、それ以来、ボランティア活動を心掛けています。仕事と働くは同じ様でも少し違う様です。

 7月7日“創生村”から取れ立てのホタテ貝が10個送られて来ました。これは村の漁業活動を体験した人に限り“創生村”の村民として、1人5,000円で登録出来る案内があり、私がNO.119の村民となったお礼の品です。夏のホタテ、冬の牡蠣のどちらかが送られて来ます。残ったお金は村の活動資金に充てられます。何か申し訳ない気持ちですが、有難く頂きました。

 唐桑の海には震災前、500程の牡蠣の養殖筏があり、作業する船の通路以外は筏で一杯だったそうですが、3月11日の津波で全て無くなったそうです。私達がお手伝いさせて頂いた時には200程の筏がありました。津波によって海底のゴミやヘドロが洗い流された結果、潮の流れが良くなり、牡蠣やホタテの餌になるプランクトンの量も増し、全ての筏に餌が行き渡る事によって、今まで経験した事の無い程に成長が良く、筏やブイが沈む位で、今後は筏の数を300位に止めて作業するそうです。森林で例えれば、間引き、枝打ちと同じです。全てが良くなかった訳ではなく、良い新発見もあったと話してくれました。

 牡蠣を出荷する2か月前には筏からロープに付いている大きく成長した牡蠣を取り上げ、70℃位の熱湯に潜らせる事で殻の表面に付着した海藻や虫などを取り除き、見た目を良くして、もう一度筏に戻し最後の仕上げをするそうです。牡蠣は70℃の熱湯の中でも元気で、震災当日も熱湯に潜らせる作業をしていた方は、高温の為に防寒具を脱いでおり、慌てて避難したそうで、当日の夜から寒くて大変だったそうです。一方、ホタテは海底から引っ張って移したり、真水に触れただけでも弱ったり、ストレスが生じて成長に良くないそうです。ボランティア活動の当日も小雨が降っていましたが、海面付近まで揚げ、決して雨には当てませんでした。あなたは牡蠣系ですか?ホタテ系ですか?

 「森は海の恋人」って知っていますかとお婆ちゃんに話し掛けられました。良い貝を育てるのには、先ず森が大切で、植林や山の手入れをすると海も元気になるそうです。海と山、貝と木、縁の無い様で共通した点も多くある様に思います。機会があれば何度でもお手伝いに行きたいと思います。頑張ってください“創生村”!

 俺もガンバル!

平成24年7月19日
 

前のページに戻る

Copyright (C) Tokyo Mokuzai Tonya Kyoudou Kumiai 2012