東京木材問屋協同組合


文苑 随想

恐ろしい誘発地震
─大津波は無いが揺れが大きい─

榎戸 勇


 太平洋プレートを海底深く潜り込ませた日本海溝は房総半島沖から伊豆七島沖、そして東京から1,000qも南の父島、母島等の小笠原諸島沖を経て南へ去って行く。従って太平洋プレートがそれより西へ来ることはない。
 代ってフィリピン海プレートが南から日本列島の西半分にやって来るが、それは伊豆半島南端の石廊崎付近から四国の西端、九州に近い処迄である。
 そうであれば房総半島南端から伊豆半島南端迄の間、東京湾、相模湾(サガミワン)へはプレートの潜り込みによる大津波が来ないことになる。ことによると一般に言われている東海地震も無いのかも知れない。大木准教授は東海地震については、無いと言いきることはできないがおそらく無いのではないかと考えて、想定東海地震(もし起きるとすれば・・・)という言葉を使っている。

 そう言われてみると、徳川家康が江戸幕府を開いてから今日迄400年余、江戸・東京が津波に襲われたという話は聞いていない。
 大正12年(1923)9月に発生した関東大震災は小田原の北から小田原を経て相模湾に至る活断層のズレによる地震で、プレートの潜り込みによるものではない。
 私の生まれる2年前の大地震だが、私の家族は生まれて半年の姉をかかえて洲崎の原っぱへ避難したが、津波は全く無かったらしい。

 ところで、3月11日の東日本大地震についての余震が新聞に時々載っている。
 大木准教授は余震について、狭義の余震と誘発地震(本震に誘発されて起こる地震)の2つに分けて説明している。
 狭義の余震というのは本震の震源域(イキ)内で発生した地震で本震(3月11日14時46分)の直後、同日15時19分(M7.7)と4月7日23時32分(M7.2)の2つだけである。尚、今回は本震より2日前、3月9日11時45分に本震のごく近くでM7.2の地震が有った。本格的な滑(スベ)り込みの前触れだったらしい。いずれも本震より小さいので、まさか、あのような大地震の前触れとは誰も考えなかったようだ。

 さて、本当に恐ろしいのは本震に誘発されて起こる誘発地震である。あのような大地震で本州各地の活断層は大きな影響を受け、その歪みを解消するために動いている。これら誘発地震は何時(イツ)どこで起きるか全く分らない。本震の翌日、3月12日4時47分に秋田県の沖、日本海でM6.4。3月15日22時31分に茨城県の内陸部でM6.4。そして富士山の西側の富士宮市付近。長野県北部魚沼の「こしひかり」の産地付近、そして11月になって広島県北部、三次(ミヨシ)市付近でも発生した。
 西日本は北米プレートではなくユーラシアプレートに乗っているので、この地震が先の大地震と関係が有るのか否か分らないが、いずれにせよ日本列島全てが歪(ユガ)みの解消に動いているのではなかろうか。

 これらの地震は全て活断層のずれによる地震で、活断層のずれは平面的に動くので津波は発生しないが、地上付近で起きるため揺れが大きく、震度よりも大きく揺れる。従って家屋や什器の被害が大きい。

 東京直下型地震(活断層のずれ)は何時(イツ)起きるか分らない。ハード面の備(ソナ)えと共に心の備え、そして家族の安全、その他色々しなければいけないようだ。少なくとも家族の安全、火災の防止だけはしておかねばならない。

 私はまだまだ大木准教授の本を十分に咀嚼(ソシャク)していない。不十分の理解であるがとり忙ぎ文章にした。
 この本『超巨大地震に迫る』(NHK出版部)は僅か740円プラス税37円である。是非購入して読んで頂きたい。日本は地震大国である。私たちに必要なのは、京浜では津波対策ではなく、直下型地震対策だと言えそうだ。以上、まだ生半可な理解による文章だがとり忙ぎ書かせて頂いた次第である。

平成23年12月4日 記
 

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