「戌亥の借金、辰巳で返せ」と古くから言われているそうだ。今年は待望の辰年、大いに期待したいのだがどうも今年の辰は病んでいるようで、我国も米国も、そして特に欧州諸国も難問を抱えて四苦八苦、全く出口が見えない世界先進国の経済、社会なので病んでいる辰はうずくまったままである。
1月の日銀(日本銀行)理事会(取締役執行役員会と同じ)での話題は今年は困難の年、そして世界先進国が立直るには少なくとも5年、いやそれ以上の期間が必要であろうとの話があったようだ。(『日経新聞』)私も全く同感である。よく、言いにくいことをはっきりと述べたなと思う。
私が小学校5年生頃、「我等国民9,000万は……」と教科書にあった。当時は台湾、朝鮮半島も日本国とされていたので、内地の日本人は7,000万人強位だったのではなかろうか。最近の新聞によれば、50年後の我国の人口は8,674万人になるであろうと厚生労働省の人口問題研究所が予測している。現在の約1億2,813万人から約4,139万人(32%)減るのである。
問題は中味である。昭和11年の7,000万人強は老人が少なく、子供達が多かった。私は東京市立明治小学校へ通っていたが、明治小学校は男子だけの小学校、別に女子だけの明治第二小学校が隣接してあった。校長以下全教員全く別々で、東京市立小学校としては格別(東京市内で3校だけだったらしい)な扱いであった。私達明治小学校付属の明治幼稚園から明治小学校へ入学した男子は全員黄色組になったので、友人は皆親しい人だけだった。クラスは赤組、青組、白組もあり、全員で200人位である。男子だけで200人、女子の明治第二小学校も同じとすると400人もの子供が居たことになる。当時は子供が多く老人は少ない。私の祖父も私が小学校4年生の時60歳で亡くなっている。まさにピラミッド型の人口構成で街全体が若々しかった。
これに対し50年後の8,674万人は、少子化で子供が少なく、長寿化で老人が多い。厚生労働省は老年(65歳以上)が3,464万人(39.9%)生産年齢人口(15〜64歳)4,418万人(50.9%)年少人口(0〜14歳)が791万人(9.1%)と推計している。厚労省は老齢年金を如何にするのかの立場で考えているが、一体どうするのであろうか。
私は年金問題より我国の経済がどうなっていくのかを考えざるを得ない。
日銀副総裁の西村清彦氏(元・東大教授)は少子高齢化の重荷は世界的であるが、特に際立つ重くのしかかるのは日本であり、中国も一人っ子政策の結果2015年頃から急激に生産人口が減少に転じ、高齢者が増える社会になるらしい。
我国は人口減で消費財の需要が減る。消費財だけではない。宅地も住宅も買手が少なくなろう。アパートやマンションも空室が目立つようになりそうだ。勿論、地域により異なるが、宅地価格も上下の波を打ちながら次第に下落しそうだ。住宅(マンションを含む)の着工数も右肩下がりで少なくならざるを得まい。縮小する社会、経済の中でどうやって生き残ろうか真剣に対策を立て実行せねばならない。人口動態を下敷きにしての対策が必要である。景気の小さな波で少し上昇した時でも、人口が増え右肩上がりの時代はもう終ったのである。昨年は我国の人口も7万人減った。生まれた子供より死亡した人の方が多かったためである。これから年々人口が減っていくのである。人口問題を常に念頭に置いて対策を立てよう。しかし、全体が縮小するのだから仕方がないというわけにはいかない。全体が縮小する中で生き残る道は品質の良いもの、他店では扱っていないものを、生産費、流通費等をどうやって削減してお客さんが喜んで買ってくれるようにするしかない。
どうも暗い話で恐縮だが、過去の歴史が示すごとく人口減少は国力の衰退を招くのである。
人口が32%減っても一人当たりの国民所得(GNI)が32%増えれば大丈夫だと言うが、老人が約40%、年少者が約9%なので男女合わせて51%の働いている人々が49%の扶養家族を抱えているのでは生活は質素にならざるを得ない。とても一人当たりの消費を32%増やすことはできない。これから年々生活は苦しくなり、50年後には上述の状態になってしまいそうだ。
本稿は全く私の独断である。私の知る限り新聞も経済雑誌や本にも載っていない。従ってことによると間違っているかも知れない。
眉にツバをつけて読んで戴いて結構。しかし満86歳、間もなく87歳になる榎戸がこんなことを言っていたなぁと10年後、20年後、そして50年後に思い出して頂ければ結構である。本稿は老人の独り言である。 |