東京木材問屋協同組合


文苑 随想

材木屋とエコ 環境 省エネ(第18回)

東京大学 北海道演習林見学

(株)コバリン 奥澤 康文
http://www.kobarin.co.jp


 7月20日(金)から7月22日(日)、北海道中央部の占冠(シムカップ)と富良野方面に出張した。目的は社有林と周辺市町村の林業や森林の現況視察であった。当日の最高気温25℃、最低気温15℃位で、湿度が低いので快適だった。
 農山村の人口の減少が急速に進行しており愕然とした。日本全体でも、20年後には約850万人の労働力が減少するという試算が最近発表された。美しい自然景観の裏側で進行している戦慄の実態も理解できた。

【東京大学北海道演習林主催の大麓山ハイキング登山会に参加】7月22日(日)

7月21日(土)東京大学北海道演習林の中部事務所の正門付近。面積が22,715haで、日本の大学演習林中最大で、東京都面積の10.4%に匹敵。演習林内数か所に事務所、資料館、樹木園等がある。
占冠村の人口も過去12年で39%減少し、現在は1140人。さいたま市の2.6倍の面積だが、人口密度は2人/km2。更に減少が続けば、村落の行政組織の脆弱化や農業、林業の作業自体も危惧される。勿論、他の農山村も例外ではなく、待ったなしの対策が求められている。
7月22日(日)登山会に参加。意外と地元の人は少なく、札幌や帯広・釧路方面そして、東京から3人、演習林の職員6人を含め参加人員は30数名。通常は演習林に観光客は入れない。
写真右は麓郷資料館前に集合、登山前の注意や説明を受けた。芝野演習林長も参加された。この後、マイクロバス2台に分乗し登山口に向かった。
登山口の標高は約1,000m。麓郷資料館から車で約30分。車内で職員の方から演習林の歴史や経営方針及び人工林や天然林の樹種や施業方法の説明がありいい勉強になった。林道の総延長は約940km。林業でも会社の経営でも共通する点が多い。
正直な所、学生時代以降は登山の経験が全くなかったので心配だった。登山靴を30数年振りに購入。悪天候にならないことを祈った。
登山口から頂上まで標高差は約500m。演習林は研究者が対象で一般には開放していない。その為、急峻な隘路で足場は悪かった。写真を沢山撮ろうとしたが、息切れがしてしまい、撮る余裕がなかった。右は頂上付近の風雪で捻じ曲がった白樺。
急に、ガス(山霧)が出てきて、雨になると思ったが降らなかった。途中で、私の前を歩いていた中年のご婦人が一時体調を崩した。私も自分の体力無さを案じたが、何とか頂上に辿り着けた。
登り始めて、約1時間後、大麓山(標高1,459m)の頂上に辿り着き安堵と感動。快晴ではなかったが、北海道連峰がきれいに眺望できた。7月下旬とは言え、残雪が何か所かに見えた。夏でも2,000mクラスの山は油断できない。
ハイマツの群落の前で昼食。コンビニで買った好物のおにぎり(梅、昆布、タラコ)を3個食べた。実に美味かったですよ!!

 日本の森林率は66%で世界第3位、木材資源の総蓄積量は約50億m2。しかし、森林・木材産業のGDPは、ドイツ26兆円に対し、日本0.2兆円(「バイオマス白書2010」)と1/100以下である。諸条件が異なるとは言え、余りにも乖離が大きい。容易ではないが林業の活性化で新たな仕事や産業が生まれる好機でもあると感じる。


【大麓山山頂での記念写真】7月22日(日)正午頃。天候にも恵まれた。

大麓山頂上での集合写真。参加者の中には、ヒマラヤ登山の経験者も男女数名含まれていたので少し驚いた。標高1,459mの標柱。
私は、30数年振り登山の達成感と風景に感動。同時に、最近の登山人口の多さも感じた。登山者は安定的に増加しているが、林業や森林保護まで考えている人は意外に少ない。
色々な人生を歩んできた人々が偶然山頂で出会う不思議な瞬間。
登る時より下山の方が楽だと思い、少し調子に乗ったので急に膝に来た。野鳥の声がきれいで、登山口付近では、霧が晴れていい天気になり気分爽快。整然としたカラマツ林が続いていた。
写真左は、下山後の麓郷資料館前庭。左は川侮ミ長(東大農学部大学院生)。右は演習林スタッフの方。演習林の仕事は地味な仕事だが、重要度は高い。尚、川浮ウんはベテランSEで、森林内でのインターネットの活用法等を教えてくれた。
胸高直径70cm以上の大径木が、約3万本あるという。今後も貴重な研究林と同時に日本の宝として、100年後に残してもらいたい。演習林スタッフの方の日頃のご苦労に頭が下がりました。
館内の展示物を芝野演習林長直々に説明して戴き、大変に恐縮しました。又、奇遇な事に芝野先生と私の大学時代の恩師とが面識があったことを聞いて大変懐かしく、親近感を覚えた。
他では決して見ることのできないような稀有の樹木標本が数十種類あり感激。数百年の樹齢に圧倒され、木々の息吹が聞こえてくる感じ。
見学後、2階の会議室で、今回の参加目的を芝野先生に説明させて戴きました。貴重な体験に感謝。


【自然豊かな富良野周辺】7月21日(土)

 富良野は、31年前のテレビ番組「北の国から」で一躍有名になった。日本中から観光客が大挙し有名な観光地となったが、現在では観光客が減少中。又、地元の人口減も進行しており、農村や山村の美しい景観が維持できない事態の招来が危惧される。特効薬はないが日本全体の問題でもあり、早急な具体策が待たれる。

午前10時頃。富良野市のユニークな「緑の美術館」を見学。家や人工物に樹木、花等のデザインが絶妙に調和して見事でした。やっぱり、著名な芸術家の作品でした。
自然の草木がメルヘンチックな感じでよかったです。都会でも近郊に同様なものがあればいいなと思った。
午後1時頃。富良野市市有林付近のラベンダー畑。夏の北海道にはこういった桃源郷的な観光スポットが随所にあります。
私は広いラベンダー畑を見たのは初体験でした。人間の気持ちに静かに訴えかける色と香り。そして、澄んだ青空、山と森林とのコントラストがとても鮮烈で最高の癒しの時。

しばし、時間を忘れてしまいました。
午後2時頃。富良野市市有林。天然林もありました。写真左は、手入れが行き届いている50〜70年生のカラマツ人工林。散歩するには最高の場所です。
場所が平らな所だったので、まるで、ドイツの平地林に迷い込んだ様な錯覚に陥りました。林業や森林の素晴らしさに久々の感動を覚えた。木々にからんでいるツタ類もきれいな緑で自然らしさを添えていた。


【占冠村の当社社有林及び村有林の状況】
7月20日(金)森林の管理は人間の手が不可欠

午後5時。左は、トマム付近の私有林。林業機械と原木丸太。人工林のカラマツを間伐し、約10haの森林から約1,000m2収穫。
通直で高品質の木材です。販売先も決まっている。急峻な地形での安全作業は、高度な管理能力が要求される。残材の有効利用が課題。
小田島課長(富良野地区森林組合)の人間味豊かな営業力と総合的な管理技術に敬服。この技術を是非次世代に継承してもらいたい。
午後4時。右は村有天然林内の林道を進む車の音に飛び出してきたキタキツネ親子。今回の視察で3回見ました。野生のキツネを見たのは、人生初の幸運。痩せた猫のように見えますが、やっぱりキツネでした。
一瞬の出来事でしたが、肉眼ではもっと大きく見えました。森の中には熊、鹿、野兎等の野生動物もいるそうですが、今回は遭遇しませんでした。


【高校同窓会の納涼会】7月28日(土)昼。ホテル グランドパレス(九段下)

近況報告の中で、「林業・森林」のことをPR。
山登り好きな健脚な人が数名おり、農林業や森林への関心が高いので楽しみです。
同窓会も若手の参入が少なく高齢化が進行。同窓会と林業は全くの別物だが、不思議な共通の課題がある。
後輩の「松本隆太郎」君のオリンピック出場(レスリング60kg級)の話題で盛り上がった。8月7日(火)、彼は見事銅メダルを獲得。40数年前の上武洋二郎先輩以来の快挙。
2012年8月11日(土) 記

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