工事の記録
RECORD OF CONSTRUCTION

 
木屋根継手試験

木材会館は最上階に約27mのスパンの木造のホールを計画しています。この木の構造を実現するために、構造の実験を段階的に行ない、つくり方を決定してきます。実験は材料試験、継手試験、面外曲げ試験、実大試験という順番で進んでいきます。今回は2月上旬に行なった継手試験についてレポートします。

梁のつくりかた
木材は天然材料なので、材の大きさがある程度決まっています。材の大きさが決まっていると、その断面で計画できる柱間の大きさが決まります。木造で大きな梁をつくる場合は、木材を接着し大断面をつくった集成材を用いるのが一般的な工法です。これに対して、木材会館ではこうした集成材を使わず、一般に流通している規格サイズの木材を使用し、大断面の梁をつくろうとしています。115mm角、長さ約4mの角材を用いて、一本一本の角材を小口方向に連結し、更にこれを高さ方向に積層し、順番に継いでいくことで長い梁をつくります。このため、角材の継手として、小口方向と高さ方向の2種類が必要になります。
まず、小口方向の継手は追掛大栓という昔からある形状の継手に近い形の継手で連結します。
 
 
次に、高さ方向の継手は、重ねあわせる木と木をそれぞれ掘り込んで、堅木を栓のように埋め込んで連結します。木の梁に引っ張りや圧縮の力がかかった際には、この埋め込んだ堅木が圧縮されることで、上下の材に力を伝えていくことになります。この小口方向の継手(追掛大栓継手)と高さ方向の継手(積層継手)が分担しあうことで力を伝達し、梁を支えます。
 

継手試験
継手試験は以前の工場視察編でご紹介した、岐阜にある実験場で行いました。小口方向の継手と高さ方向の継手のそれぞれについて、耐力を確認する試験を行っています。今回我々が視察したのは、この高さ方向の継手(積層継手)の引っ張り試験です。

我々は積層継手として、込み栓を現したものと埋め込んだものの2種類を検討しています。今回の実験ではこの2種類の継手について、栓の形状やサイズを変えたものをつくり、これらの強度の差を調べ、最終形状の決定のためのデータをとることが目的です。試験では試験体を実験機で上下に引っ張り、各継手の耐力を確認します。試験体は3本の木を重ね合わせ、材の合わせ面ごとに2箇所ずつ合計4箇所の継手を設けています。
 

積層継手
ここで現在比較している二つの継手をご紹介します。
積層継手 1 現し継手
一つめの継手は「現し栓」と呼んでいるもので、母材(ヒノキ)側を端から端まで通して抜かれたところにはめ込みます。この継手の場合、栓が梁の表面に現れます。
積層継手 2 埋込継手
二つめの継手は「埋込栓」と呼んでいるもので、母材側を栓と同形状にくり貫き、栓を埋め込みます。栓の形状が角丸なのは、加工機で掘り込みをするときに、上部からドリル型の刃を回転させて彫るのでコーナー部は丸型になるためです。

実験結果
実験の結果、「現し」「埋込」共に設計時に想定していた耐力があることが確認出来ました。一方で、それぞれの継手については、栓の形状やサイズを変えると強度について若干の差があり、やや小さくしたほうが強いことが確認できました。これらの結果を踏まえつつ、施工性やメンテナンス、意匠性も考慮し、継手が見えた方がいいのか、見えない方がいいのか検討していきます。
by NIKKEN SEKKEI.ltd :2008-07-10:木材の実験:

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